2007年04月09日
米印原子力協力に関する国会/地方議会での動き
米印原子力協力に関する日本政府の見解を、今国会で衆議院の岡田克也議員(民主党)、阿部悦子議員(社民党)が委員会で、それぞれ質問しています(米印原子力協力国会で議論)。衆議院における議論に引き続き、参議院からは福島みずほ議員より日本政府の見解についての質問主意書が提出され、3月17日、福島議員の質問に対する回答がありました。
また、佐賀県議会に続いて、各地の議会で意見書が採択されています。
一方、政府の見解としては、麻生外務大臣の訪印時のやりとりがありました。
民生用原子力協力に関し、シン首相より、今後IAEAやNSGで議論されるとして、日本の支持を要請。これに対し、麻生大臣より、日本の立場は現在検討中である旨応答。
「麻生外務大臣の南アジア地域協力連合(SAARC)首脳会議出席(概要及びとりあえずの評価)」平成19年4月3日 外務省
米印原子力協力に対する日本の政策に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
福島みずほ
参議院議長 扇千景殿
米印原子力協力に対する日本の政策に関する質問主意書
昨年十二月、米国議会は米国とインドの原子力協力(以下、「米印原子力協力」という。)の実施に関する法案を可決し、米国によるインドに対する核関連の輸出と協力が開始されようとしている。
インドは一九九八年に核実験を行い、核兵器不拡散条約(以下「NPT」という。)に加盟しないまま「核保有国」宣言を行い、現在でも核兵器開発を続けている。これに対して日本を含む国際社会は、インドを核保有国としては容認せず、NPTへの加盟と国際的核軍縮・不拡散努力への合流を一貫して求めてきた。それにもかかわらずインドは、包括的核実験禁止条約(以下「CTBT」という。)に署名せず、兵器用の核分裂性物質の生産を継続し、核開発を続けている。さらに、日本が毎年提出している国連総会における核兵器廃絶決議には、反対投票を繰り返している。原子力の平和利用は、それを軍事転用しないという誓約及びそれに対する国際的検証措置と引換えに初めて認められるというのが、NPTを始めとする世界的な核不拡散体制の大前提である。インドに対して原子力協力を行うことは、インドの「核保有国」としての地位を容認し、NPTを始めとする世界的な核不拡散体制を揺るがす危険性をはらんでおり、米印原子力協力に対しては、国際的な懸念の声が高まっている。
こうした中、被爆国であり、国際的な核軍縮・不拡散を外交の優先課題の一つとして掲げてきた日本がどのような態度をとるかは、世界的な注目の的となっている。去る十二月十五日のインドのシン首相との会談において安倍内閣総理大臣は、この問題に対する日本の立場は「検討中」と述べるにとどまったが、「政府は米印原子力協力を指示する方向で調整している」、「支持の方針を固めた」といった報道がなされている。仮に日本が支持するとなれば、それはNPT体制を柱としつつCTBT推進や兵器用核分裂性物質生産の国際的禁止を求めてきた日本の核軍縮・不拡散政策に大きく矛盾する可能性が高いと言える。
こうした状況にかんがみ、以下質問する。
- 一 日本政府の立場について
米印原子力協力に関し、日本政府の立場は「検討中」とのことであるが、その内容を含め、立場を明らかにされたい。- 二 米印原子力協力をめぐる主な論争点について
- 米印原子力協力とNPT体制の整合性について、政府の見解を示されたい。
- インドの核軍備の現状について、政府の認識を示されたい。また、インドは兵器用核分裂性物質の生産を続けていると言われており、インドに対してウラン燃料の供給が行われれば、インドの核軍拡につながる可能性があり、それは、南アジアにおける軍拡競争と地域の不安定化をもたらすとの懸念が指摘されている。この点について、政府の見解を示されたい。
- 米印原子力協力によって、インドに対して課せられる保障措置について、政府の認識を示されたい。また、インドの核施設が保障措置下に置かれるというが、再処理施設などは保障措置外に置かれるため、インドは核兵器開発を継続できるという指摘がある。この点について、政府の認識を示されたい。
- 三 世界への影響について
インドに「核保有国」としての地位を事実上認めるような措置をとれば、国際条約に従わず核開発を強行したとしてもいずれは核保有国として容認されるのだという誤ったメッセージを他の国々に与えかねない。このことは、北朝鮮に対して核兵器開発を放棄することを求め、イランに対して核兵器能力の断念を求めている日本を始めとする国際社会の努力に矛盾する可能性がある。また、パキスタンと中国の原子力協力の可能性など、南アジアの核問題を更に混乱させる可能性がある。
これらの点を踏まえ、インドに対する原子力協力がNPT体制に与える影響について、政府の見解を明らかにされたい。- 四 今度の日程等について
今後、原子力供給国グループ(NSG)で米印原子力協力問題に関する討論が行われることになると思うが、具体的なスケジュール及び日本政府としての対応の方針を明らかにされたい。右質問する。
内閣参質一六六第一六号
平成十九年三月十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 扇 千景 殿
参議院議員福島みずほ君提出
米印原子力協力に対する日本の政策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員福島みずほ君提出米印原子力協力に対する日本の政策に関する質問に対する答弁書
一、二の1及び三について
インドの戦略的重要性は認識しており、また、原子力の活用により、地球温暖化問題に対処しつつ、同国において増大するエネルギー需要を手当てする必要性は理解している。他方、核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)の非締約国である同国への原子力協力については、国際的な核軍縮・核不拡散体制への影響等を注意深く検討する必要があると考えている。政府としては、以上のような考え方を踏まえ、今後とも国際的な場での議論に積極的に参加してまいりたい。
二の2について
政府としては、インドは、核兵器の製造能力を保有していると認識している。同国の具体的な核軍備の現状については、各種の情報収集活動を行っているが、そのような活動により得られた情報を明らかにすることにより対外的な関係において我が国が不利益を被るおそれがあるため、お答えすることは差し控えたい。
インドへのウラン燃料の供給による御指摘のような影響については、同国への国際社会による原子力協力の具体的な態様が決まっておらず、具体的にお答えすることは困難である。
二の3について
御指摘の保障措置については、現在、インドと国際原子力機関との間で協議が行われていると承知しており、お尋ねについては、現時点でお答えすることはできない。
四について
現時点において、原子力供給国グループにおける米印原子力協力に関する議論の具体的な日程は、決定されていない。政府としては、一、二の1及び三についてで述べたような考え方を踏まえ対応する方針である。
南アジアの核軍拡競争を防ぐため原子力供給国グループ(NSG)での慎重な議論を求める意見書
核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核実験を行い核兵器計画を進めているインドに対する原子力関連輸出を認めるための議論が原子力供給国グループ(NSG)で予定されている件について、南アジアの核軍拡競争を防ぐためにグループ内での慎重な議論を求める意見書を政府および外務省に提出する。
理由
米国が昨年制定した「米印原子力協力法」は、核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核実験を行い核兵器計画を進めているインドに対し米国が原子力関連輸出を行うことを認めるものである。この協力が実施されると、インド・パキスタンの核軍拡競争に拍車がかかる可能性があると懸念されている。米印の協力が実施されるには、日本も加盟している原子力供給国グループ(45ヶ国)による規則の変更が必要であるから、国際的にも被爆国日本の立場が注目されている。
原子力供給国グループ(NSG)は、1974年のインドの核実験を契機に設立されたものである。米国が中心になって設立されたグループであるが、その決定は、参加国のコンセンサスで行われる。また、日本は原子力先進国であるだけでなく、「我が国の在ウィーン国際機関日本政府代表部がNSGの事務局機能としてのポイント・オブ・コンタクト(Point of Contact: POC)役割を担っている」(外務省)ことからも、日本がどのような立場をとるかは重要な意味を持つ。
国連安全保障理事会は、1998年に印パ両国が核実験を行った際、決議1172号(1998年6月6日)を全会一致で採択し、インド及びパキスタンに対し、「ただちにその核兵器開発計画を中止」するよう要求すると同時に「核兵器用の核分裂性物質のすべての生産を中止する」よう求めている。決議はまた、「すべての国に対し、インド及びパキスタンの核兵器計画に何らかの形で資する可能性のある設備、物質及び関連技術の輸出を防止するよう奨励」している。また、インド国内においてはウラン鉱山や核施設周辺において他数の国民が被曝によって苦しんでいるといわれている。とくに北東部のジャールカンド州においては、住民の多数を占めるインドの先住民に多大な生活被害が出ているという。インドにおける核兵器開発をこれ以上助長するようなことに協力するべきではない。
日本はこれまで核被爆国として核兵器の不拡散と廃絶を率先して求めてきた。
そのような意味からも、NSGにおいて、その設立の主旨、1998年の国連安全保障理事会の決議などを考慮して、慎重な議論を主導することが日本の国際的な使命と言える。また調布市議会は、昭和58年に「非核平和都市宣言」を、平成11年に「核兵器のない21世紀を希求する決議」を採択している。
核兵器を廃絶する上で重要な核不拡散条約(NPT)体制が揺らいでいるこの事態に対して調布市は懸念を表明する。
よって、南アジアの核軍拡競争を防ぐため原子力供給国グループ(NSG)での慎重な議論を求める意見書を、地方自治法99条に基づいて内閣総理大臣及び外務大臣に提出する。
3月22日 調布市議会
