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Gensuikin

2007年10月04日

インドへのウラン輸出撤回を!

ティルマン・ラフさんオーストラリア・ウランのインドへの輸出計画、その前提ともなる米印原子力協定。これら、核不拡散条約体制が直面する危機に、日本のグループと来日中のIPPNW(核戦争防止国際医師会議)オーストラリア代表、ティルマン・ラフさんが、それぞれ外務省、オーストラリア大使館を訪問、要請文の提出後に議員会館内で報告会を開きました。

外務省では、軍備管理軍縮課長の森野泰成さんなどと対談。「提案されているインドと米国及びオーストラリアとの原子力協力に関して」という首相と外相宛の書簡を手渡しました。森野課長は着任後わずか3週間ほどという事もあり、日本のごく基本的な核軍縮へむけた政策以外に、具体的な方針などを聞くことはできませんでしたが、ラフ博士から、オーストラリア国内で対印ウラン輸出が大きな議論になっている事、経済的にもメリットがなくウラン鉱を持つ大手資源会社も輸出を渋っている事、国民の支持のない政権のきわめて政治的な判断で押し進めているこのウラン輸出計画が、数ヶ月内の選挙で変わる可能性の大きい事などが説明されました。また、米印原子力協定が、インドに核実験や核分裂制物質生産の禁止も求めず、核施設が査察対象となるかどうかの線引きも自由にできるなど、全くNPTの基本ルールを外れている事、この例外を認めれば、パキスタンやイスラエル、その他の核開発疑惑国などに「核兵器を持ってしまえば国際的に優遇される」というような間違ったメッセージをおくることになるなどを再度強調。今後NSGでの議論へ向けての情報交換などを約束して外務省での面談を終了しました。

2007年10月1日

福田康夫総理大臣様
高村正彦外務大臣様

提案されているインドと米国及びオーストラリアとの原子力協力に関して

「原子力供給国グループ(NSG)」の影響力を持つメンバーとしての貴政府に対し、提案されている米国からインドへの核物質及び二重目的核技術の移転が、米印両国の2007年8月1日付け協定文において示されているかたちで進むことのないように保証して頂くよう要請するためにこの書簡を書いております。

この協定が実施されれば、現在既に深刻な問題を抱えている国際的不拡散体制を重要なかたちで弱体化することになるしかありません。そして、核不拡散体制の重要な世界の安全保障と健康の問題に対する一貫性のある、公正で、規則に基づくアプローチの展望を脅かすことになります。

私は、特に日本政府に対し、NSGの責任あるメンバーとして、この協定がさまざまなかたちでNSGのガイドラインと矛盾し、NSGの唯一の存在理由である核不拡散の目的達成の基礎を脅かすという点について綿密に検討するよう要請します。

核兵器の使用、実験、製造、輸送、貯蔵及び使用の用意があるとの態度が、ヒトの生命及び健康に対する最も緊急かつ深刻な脅威をなすものであること、そして、核兵器の拡散が世界の安全保障に対する重大な危険を意味することを理解する医師を代表して、私たちは、「核不拡散条約(NPT)」の核軍縮及び不拡散の条項の完全な遵守を支持しています。さらに、私たちは、核兵器禁止条約による核兵器の世界的禁止によってNPTを強化・拡大することを提唱しています。NPTの約束は核兵器禁止条約によってのみ達成されうるからです。私たちは、米印間の「[米国原子力法]セクション123」協定は、これら目的に反するものであり、南アジアのみならず世界の他の地域においても拡散の危険を増大させるものであると考えます。

インドが1974年に核実験を行い、平和目的で移転された核技術が悪用されうることを反論の余地のないかたちで示して見せた後に広がった懸念を基礎としてNSGが設立されたものであるというのは、憂うべき皮肉であります。NSGは、NPTに加盟することを拒否する国々に対する「平和目的の」核技術の移転を防ぐため、そして、非核兵器国への移転が核兵器計画への転用を防ぐかたちでなされるよう規制するために、設立されました。NSGのガイドラインは、NSGの公式な文書によれば、「平和目的のための核貿易が核兵器あるいは他の核爆発装置の拡散に寄与することのないよう保証すること目指す」ものであります。

イスラエル、インド、パキスタンは、NPTの外にいて核兵器を取得しており、従って、それによって条約の義務に違反したわけではありませんが、核兵器国としてのこれらの国々の地位は、国際的核不拡散体制を深刻なかたちで弱体化しております。これら三国全てに対し、その核兵器を放棄し、非核兵器国としてNPTに加盟するようにとの要求が広範になされています。米印協定は、NPTの枠外の核兵器国としてのインドの地位を承認し、これに報酬を与えるものであるだけでなく、核不拡散に反対する世界的規範を弱体化するものでもあります。

協定の下で構想されているインドのための特別な例外措置は、核不拡散体制の差別的性格をさらに悪化させるとともに、必然的に、他の国に対しても核兵器を取得するよう奨励することになります。それは、さらに、インドの核兵器用核分裂性物質製造能力を相当に増大させることによって南アジアで進行中の核軍拡競争を悪化させることになるでしょう。それが、パキスタンによる、そして場合によっては中国その他の国々による、核拡散的対応を呼び起こすだろうことは想像に難くありません。また、その結果原子力計画が劇的に増強されることになれば、風力や太陽を初めとする環境に優しい再生可能エネルギーの開発・展開のために緊急に必要とさえる大規模な投資が、そちらに振り向けられることになります。これは、長期的エネルギー安全保障と気候変動の制限の展望に深刻な影響をもたらすことになります。

要するに、協定は、NPTとNSGの使命との両方を無視し、台無しにするものであります。NSGは、米国がこれらの移転の合法的な実施のために要請している免除措置を拒否するという国際社会に対する責任を果たすことができ、また、そうすべきであります。このような例外主義をイスラエル、パキスタン、その他の将来のさらなる拡散国に対しても適用せよとの圧力がかかる可能性も考慮しなければなりません。

平和と軍縮のために活動している私たち職業的医師の団体は、また、発電のための原子力の利用について警告することが私たちの義務だと考えます。原子力技術は、安全でも経済的でもなく、人々の健康と環境に対するユニークで膨大かつ非常に持続的な危険に満ちています。これらの危険は、最近、柏崎・刈羽原子力発電所が地震による損傷で幾重もの放射能漏れを起こし、運転中止になったことによって再度明らかになりました。さらに、7月に『ガン治療ヨーロピアン・ジャーナル』(2007年16号355-363ページ)で発表された研究は、カナダ、フランス、ドイツ、英国、日本、スペイン、及び米国の原子力施設周辺の子供達の間で白血病の発症率の24%の上昇を示しました。

「社会的責任を考える医師(PSR)」──核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」の米国支部──と「平和と開発のためのインドの医師(IDPD)」──IPPNWインド支部──は、IPPNWとともに、インド議会と米国議会に対し、この協定を、国際的平和と安全保障にとって危険であるとして拒否するよう呼びかける同封ようなステートメントを発表しました。この呼びかけは、8月1日の最終的合意文書の発表によって無視されることになりました。

私はまた、オーストラリア政府が、米国に倣い、オーストラリア・ウランのインドへの輸出の道を開くべくインドと原子力協力・保障措置協定を結ぼうとしていることについて深い懸念を表明したいと思います。これまで概説してきた理由全てからいって、これは、極めて遺憾であり、核拡散を推進し、既に問題を抱えているNPT体制を脅かすと同時に、南太平洋非核地帯条約の下におけるオーストラリアの義務に違反することになります。この条約は、各締約国に対し、「原料物質若しくは特殊核分裂性物質、または、平和目的の特殊核分裂性物質の再処理、使用若しくは生産のために特に設計され若しくは作成された設備、若しくは資材を、(i)非核兵器国には、NPTの第3条1で規定された保障措置の適用を受けていない限り(ii)核兵器国には、国際原子力機関(IAEA)との間の適切な保障措置協定の適用を受けていない限り、提供しない」ことを義務づけています。ここで規定されいる保障措置は、フルスコープ(包括的)保障措置であり、これはインドには施されていないものです。

インドに対するウランの輸出への道を開くというオーストラリア政府の決定は、NPT締約国以外の国にはウランを売らないとする超党派のオーストラリア政府の過去30年の方針──昨年にもアレクサンダー・ダウナー外務大臣が再表明した方針──を完全に逆転させるものです。この決定は、オーストラリアの非常に広範な市民社会諸団体から反対されています。連邦政府における野党である労働党は、今年中に実施予定の連邦政府選挙で政権を取れば、インドへのオーストラリア・ウランのいかなる輸出にも反対すると明確に述べています。

以上の理由により、私は、貴政府の力によって、NSGが、この分野における国際的規範及び常識の最終的判定者として、米印原子力協力協定を不拡散の目的に反するものとして拒絶するよう保証して頂くよう要請します。私はまた、オーストラリア政府が提案しているインドとの核保障措置協定及びオーストラリア・ウランのインドへの輸出は受け入れられるものではなく、核不拡散についてオーストラリア政府が表明している約束と矛盾するとオーストラリア政府にお伝え頂くよう要請します。

さらに、IAEAその他の関連した場を利用して、NSGガイドラインの一貫性のある適用と、核拡散防止と核軍縮の促進のための国際的な法的規則と制裁措置の強化とを支持するよう要請します。

敬具

ティルマン・A・ラフ

オーストラリア「国際核廃絶キャンペーン(ICAN)」運営委員会議長
「オーストラリア核戦争防止医学協会(MAPW)」前会長
「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」理事
メルボルン大学ノッサル世界保健研究所準教授

同封文書あり(原文 pdf)(訳・説明