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2008年11月21日

原爆被爆者対策を厚生労働省へ要請

厚生労働省へ要請.JPG

flickrサイト厚生労働省へ要請

11月19日、原水禁、連合、核禁会議の3団体は、来年度予算編成を前に、厚生労働省に対し、原爆症認定の審査方針の再見直しなど、原爆被爆者に対する施策の充実・強化を求める要請をおこないました。

 3団体を代表して連合の大塚総合組織局長から、国が12連敗している原爆症集団訴訟を受けて、早急に現行の原爆症認定制度を見直しすること、改正被爆者援護法を着実に施行し、在外公館での被爆者手帳の交付を速やかに実現すること、さらに被爆2世に対するガン検診の予算措置や被爆体験者の制度化などを要請しました。

これに対する厚生労働省の回答では、新しい審査方針のもと積極認定作業では、7000件以上の審査待ちの「滞留」があることがあきらかになりました。であるならば、早急にそれに対応する審査体制の確立が求められているはずですが、そのような努力が感じられませんでした。これでは、いま苦しんでいる被爆者をますます苦しめるだけです。

改正被爆者援護法による在外公館での在外被爆者の手帳交付については、施行期限の12月17日に向けて外務省など関係方面との調整段階であるとしながら、11月10日長崎地裁が下した「鄭南壽さんが海外から行った被爆者手帳交付申請の却下処分を取り消すことを命じる」との判決を不服として、長崎県が18日控訴したことに対しては、原告の感情は理解するがあくまでも法理論上控訴したものであると回答しました。すでに「来日要件」は6月の法改正で撤廃され、来月17日より「改正被爆者援護法」が施行されることが明らかなのにもかかわらず、被爆者に対する人道上の配慮もない対応です。被爆から63年、被爆者は高齢化し、在外被爆者の中には健康上来日できない人も多数います。このことを配慮しての今回の法改正であったはずで、特別の配慮があってしかるべきものです。冷たい行政の対応は、在外被爆者をさらにムチ打つ結果となっています。

また、医療費上限額は増額要求したことが明らかになりました。しかし、被爆二世や被爆体験者対策に関しては、ほとんど従来からの施策のままで前進がありませんでした。

厚生労働省の回答は概ね次の通り。

  1. 原爆症認定については、爆心地から概ね3.5km内で被爆した方で認定基準の5疾病(がん、白血病など)については、迅速に審査を行うべく原子爆弾被爆者医療分科会に4つの部会を設け、積極的に認定を行っている。さらに、判決で確定した5疾病以外に関する事例については元裁判官など法律家も分科会に入り、総合的個別審査による認定を行っている。認定数は、これまでに昨年度の約12倍となる1615件を認定したが、審査待ちの申請者が7,000件以上あるので、引き続き審査に鋭意努力していきたいとし、審査体制強化として人員等の増強については考えていない。5疾病以外の疾病を新たに認定基準に加えることについては、医療分科会で事例のヒヤリングを行い議論しているが、結論の期限を決めているわけではない。
    なお、長崎地裁が11月10日、手帳交付に関する在外被爆者の来日要件を国が厳格に適用してきたのは違法として、却下処分の取り消しを命じ、被告の長崎県が昨日控訴したが、原告の感情は理解するがあくまでも法理論上控訴したものである。12月の施行の際にも、控訴の取り下げも考えていない。
  2. 被爆者援護法の改正による在外公館での被爆者手帳の交付に関する施行日期限は12月17日となり、現在、外務省をはじめ医療機関などと細部につき調整中であり、改正法にもとづく政令案についてパブリックコメントを募集しているところでもある。また、改正法の附則にある在外被爆者の医療費の上限については、来年予算要求で現行145,000円を153,000円、入院は現行157,000円を165,000円に、それぞれ8,000円増額要求した。
  3. 被爆二世については、被爆二世健康調査結果から原爆が影響している知見が出ていないため、ガン検診は診査項目には取り入れられていない。ただし、血糖値検査を平成20年度から措置できたので、来年度も予算要求している。
  4. 長崎における「被爆体験者」については、被爆者同様の扱いは難しいが、被爆者精神医療事業として引き続き行っていく。



2008年11月19日

厚生労働大臣
 舛添要一 様

日本労働組総連合会
 会長 髙木 剛
原水爆禁止日本国民会議
 議長 市川定夫
核兵器禁止平和建設国民会議
議長 丸尾直美

被爆者援護施策の充実・強化に関する要請について

 謹啓 貴職におかれては厚生労働行政に邁進されていることと存じます。

 さて、被爆者援護施策に関する原爆症認定に関して、新たな基準に基づき、悪性腫瘍をはじめ甲状腺機能障害など5疾病については、積極認定されていますが、認定基準から外された5疾病以外(肝臓機能障害や脳梗塞の後遺障害など)については、未だに集団認定訴訟で争われており、9月の札幌地裁、10月の千葉地裁では原爆症と判断し、国に対し却下処分の取り消しを命じました。しかし、国は通算して12連敗にも関わらず、高裁での判決が下るまで争う方針としており、追加提訴を考慮すると裁判の長期化は免れず、高齢化する被爆者に対しては厳しいものといえます。

 被爆者救済の援護法の精神に照らして、認定基準については、早急に見直しが必要と考えます。

 さらに、被爆二世に対する健康対策、長崎でのいわゆる「被爆体験者」の援護施策の課題が残されており手厚い対応が求められています。

つきましては、厚生労働省におかれては、被爆者援護施策の充実・強化に向けて、一層の取り組みを促進されたく、下記内容について要請させて頂きます。

  1. 原爆症認定の審査方針の再見直し
      被爆者救済を旨とする被爆者援護法の趣旨の則り、認定訴訟の各高裁 判決、地裁判決を十分に踏まえ、被爆実態に応じた更なる原爆症認定方針の見直しを行い、被爆者を救済すべきである。
    (1)放射線起因性については、それが推認される5疾病以外の疾病についても、これまでの裁判で判断された「被爆の状況から発症の経過、現在の健康状態までを全体的、総合的に把握し、被爆の事実が疾病の発生や進行に影響を与えたことが合理的に認められれば、放射線起因性が立証されたと評価すべきである」ことを積極的に取り入れるべきであること。
    (2)要医療性については、「後遺症」や「転移や再発の可能性」などからも要医療性の概念を広げること。
  2. 在外被爆者への援護法完全適用
      改正被爆者援護法に基づき、(1) 在外公館での被爆者手帳の交付、をはじめ、(2) 在外被爆者が適切に医療の給付を受けられるよう、原爆症の認定申請の在り方について検討を行うとともに、(3) 医療・介護に要する費用の支給のあり方(上限額等)についても検討を行い、それらを来年度予算措置に反映すること。
  3. 被爆二世対策の充実
      被爆二世については、その実態調査とともに、がん検診等を加えるなど健康診断の充実など、十分な対策を講じ、来年度予算措置に反映すること。
  4. 被爆体験者対策の充実
     いわゆる「被爆体験者」については、被爆者と選別されることなく、被爆者同様の援護対策が受けられるよう対策を講じること。

以上