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2003.2.18

内閣総理大臣 小泉 純一郎 様
厚生労働大臣 坂口  力  様
法 務 大 臣  森山 真 弓 様

李康寧さんの福岡高裁判決
に対する国の上告に抗議する

 2003年2月7日、福岡高等裁判所(川久保政徳裁判長)は、在外被爆者・李康寧さんが「韓国への帰国を理由に被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給を打ち切られたのは違法」として国と長崎市に対し、処分の取り消しや不支給分の手当の支払いなどを求めた訴訟で、原告の健康管理手当受給資格を認め、手当の支払いを命じた。李康寧さんは、長崎地裁判決に続き、福岡高裁でも勝訴を勝ち取った。
 判決では、「原告は帰国しても日本に居住していなくても、被爆者援護法にいう被爆者の地位を失わず、被爆者健康手帳は無効にならない」と指摘した。先の郭貴勲さんの大阪高裁判決と同じように「被爆者はどこにいても被爆者」であることをあらためて、裁判所が認め、いままでの被爆行政の違法性を糾弾するものとなった。
 しかし、国は、手続上、機関委任事務として自治体を通して給付していても責任はすべて国にあるにもかかわらず、「給付事務の権限や責務は自治体への委任者である国にある」との判断は誤りであるとして不当にも2月17日に上告した。支給手続の事務的な内容に問題をすり替え、長年にわたって在外被爆者への援護を放置してきた責任を放棄するものであり断じて許すことはできない。
 在外被爆者の平均年齢が70歳を越える中で、先の郭貴勲さんの判決に光を見いだした人々に対し、新たな日本の行政の壁を立ててなお訴訟を続けることは、在外被爆者の心情と実情をまったく理解しない行為である。
 まずなによりも求められているのは、在外被爆者に対する早急な援護の実施である。在外被爆者に援護を適用することが司法の判断として定着した以上、海外での被爆者認定や被爆者健康手帳の交付など、残された具体的諸課題の解決が急務となっている。今回の手当支給義務者もその流れの中で合理的に解決すべきである。いたずらに機関委任事務の解釈の違いを争っていては、被爆者の苦しみを引き延ばすだけで、これまで放置してきた在外被爆者に対する誠意ある対応とはいえない。
 来日を前提とした支援事業は、海外にいて日本に来ることが出来ない多くの被爆者からは「援護法の枠外の小手先の対応」と批判されている。まさにいま日本の戦後補償の内実が問われている。国は、この判決を、残された問題解決の足がかりとしてとらえ、上告をただちに撤回し、早急に解決に向けての法整備を行い、責任ある対応をするよう強く求めるものである。
 問題の責任は、被爆者にあるのではなく、国にあるのである。

 2003年2月18日
フォーラム平和・人権・環境
原水爆禁止日本国民会議
議 長 岩松 繁俊