核兵器
2002.11.19

核弾頭付き迎撃ミサイルの検討

 先頃米国議会を通過した2003年度国防歳出法は、核弾頭付きの迎撃ミサイルの研究・開発を禁じていますが、国防省の諮問グループ「防衛科学評議会(DSB)」は核弾頭付き迎撃ミサイルというアイデアについての検討を続ける計画だと、エアロスペース・デイリー紙(10月31日)が報じました。

 現在米国で開発の進められているミサイル防衛システムの迎撃ミサイルは、敵のミサイルの弾頭に体当たりして破壊しようというものです。これだと囮の弾頭をばらまくなどの対策を使われるとうまくいかないかもしれないというので、でてきたのが、迎撃ミサイルに核弾頭を載せて、敵の弾頭の近くで爆発させるという考え方です。囮を使ったものであっても、生物・化学兵器を小さな多数の弾頭に入れたものであっても、近くまでいって大きな威力の核弾頭を爆発させれば、大丈夫だというわけです。ラムズフェルド国防長官からこの方式について検討するよういわれたとDSBのウイリアム・シュナイダー議長が語り、話題になりました(ワシントン・ポスト紙4月11日)。今年夏から検討を始めるとの計画でした。

 実は、現在モスクワを守るために配備されているシステムはこの核爆発方式です。米国も、1970年代にこの方式でシステムを短期間だけ配備しましたが、撤廃してしまいました。その後、このアイデアが再浮上してこなかったのは、頭の上で核爆発を起こすという考えが国民に受け入れられなかったことや、核爆発によって生じる電磁パルスが、レーダーや電子機器類を使えなくしてしまうという問題があることなどのためです。また核爆発で米国自身の軍事・民生用衛星が破壊されてしまう恐れがあります。

 ワシントン・ポスト紙の報道で怒ったダイアン・ファインスタイン(民主党:カリフォルニア選出)とテッド・スティーブン(共和党:アラスカ選出)両上院議員が、予算案につけたのが、冒頭で触れた禁止条項です。「ミサイル防衛システム用の核弾頭付き迎撃ミサイルの研究、開発、評価、購入、配備」にいっさい予算を使ってはならないというものです。この条項のついた国防歳出法は、10月23日にブッシュ大統領が署名し、法律となりました。本来なら歳出法の先に通すべき国防歳出権限法は、11月13日に成立したところですが、こちらにも同じ条項が入っています。

 しかし、DSBは「助言だけを行うものであり、国防省当局は評議会の勧告が適切だと判断する限りにおいて実行に移す」から、今回の研究禁止措置は、DSBの「研究の結論や完成に何も影響を与えない」と国防省の担当者は述べています。研究は、今年中に終わる予定です。

 スティーブン上院議員は、地上配備の迎撃ミサイルシステムが最初に配備されることになっているアラスカ州の選出で、ミサイル防衛の推進論者として知られる人物です。自分が推進している計画の妨げになることや、自分の州に近い頭上で核爆発を起こすというのでは州民の支持が得られないだろうということが、修正条項提出の理由でしょうか。

 最後に迎撃ミサイル(スパルタン)用の地下核実験が行われたのは、1971年、アラスカ州アムチトカでのことで、エネルギー省は、その威力は5メガトン(5000キロトン)以下だったとしています。(広島は15キロトン)。

 核弾頭付き迎撃ミサイルの計画は、あまりにも不人気でつぶれてしまう可能性が大きいと考えられますが、スティーブン上院議員らの反対を和らげるために、海上配備にするという案が浮上するかもしれません。その場合、海上配備のミサイル防衛計画に引き込まれている日本がどのような関わりになるかが問題になります。また、新しい弾頭の開発が必要と言うことで核実験再開の口実になるかもしれません。新たな核兵器の開発をいっさい許さないという強力な運動が必要です。

参考: 核実験の再開をほのめかすブッシュ政権
リークされた『核態勢の見直し』─核にしがみつく態勢
新型核の解説(原水禁大会の資料から)