核兵器北朝鮮
2003.3.20

北朝鮮のミサイルの脅威の評価

 米国にとって北朝鮮のミサイルはどの程度の脅威を持つものでしょうか。ミサイル問題の専門家でUCS(憂慮する科学者同盟)の物理学者デイビッド・ライトは、「テポドン2の能力は、問題ではあるが、普通言われているようなものよりは、相当低い」といいます。先に紹介した米国の専門家28人からなる「米国の朝鮮政策に関するタスク・フォース」にライトが提出した論文の結論です。本人の許可を得てこの論文を翻訳してここに載せました。

北朝鮮のミサイルの脅威の評価

 (2003年2月5日)
デイビッド・ライト
UCS(憂慮する科学者同盟)世界安全保障プログラム共同ディレクター/上級科学者
MIT安全保障プログラム調査科学者

 米国では、北朝鮮の弾道ミサイル計画について、そして、米国の領土や同盟国を脅かすその能力について、相当心配されている。北朝鮮は、1980年代半ば以来−−おそらくは、相当の外国の援助を得て、一連の弾道ミサイルを開発、生産し、その射程を延ばしてきている。現在、韓国と日本の全土に届く射程のミサイルを配備しており、さらに長い射程のミサイルを開発中である。また、他の国にミサイル技術を−−それに完成したミサイルそのものをも−−移転してきたことが知られている。

北朝鮮の軍事的能力に関する評価・分析において、北朝鮮は長距離核ミサイルを所有しているとか、急速にそれを獲得しようとしているとかされていることが多いが、これは真実ではない。

北朝鮮は、射程の短い種類のスカッド・ミサイルを保有している。500キログラムの搭載物を載せた場合、射程500−600キロメートル程度のもので、これらについては十分に実験が行われている。これらのミサイルは、すべて、核・生物・化学兵器の弾頭を載せて韓国に届くことができる。北朝鮮がミサイル用にそのような弾頭を開発したとしてのことである。北朝鮮は、これらのミサイルを多数、他の国々に売却してきた。

現在北朝鮮が配備している射程のもっとも長いミサイルは、ノドンである。ノドンの射程は、搭載物の重量が約700キログラムの場合、1300キロメートルと推定されている。このようなミサイルは、日本全土を標的にすることができる。北朝鮮がノドンの実験をしたのは、一回だけと見られている。1993年5月のことである。その他、パキスタンが、ガウリの実験情報を提供したかもしれない。ガウリは、主として、あるいは全面的に、北朝鮮の技術からなると見られている。また、北朝鮮は、1998年に発射したテポドン1の第1段階としてノドンの改良型を使ったと考えられている(1)。ノドンは、スカッドより大きくて強力なエンジンを使っている。このエンジンは、外国の援助を得て開発されたと考えられているが、北朝鮮が開発しているさらに長い射程のミサイルにも使われていると見られている。

ノドンよりも長い射程のミサイルの唯一の実験は、1998年8月に行われたものである。小さな衛星を軌道に乗せようと、3段階式のテポドン1が発射されたが、これは、成功しなかった。ミサイルの第3段階が失敗したためである。しかし、この実験は、北朝鮮が多段階式のミサイルを発射する能力を持っていることを、そして、固体燃料技術を持っていることを示した(固体燃料は、第3段階で使われた)。しかし、このミサイルは、さらに実験をしなければ実用レベルにあるとみなすことはできない。

将来テポドン1の実験が成功したとしても、その能力は限られたものであり、うまく行っても、アラスカやハワイまで小さな搭載物を運ぶことができる程度である。1999年9月の米国の「国家情報推定(NIE)」報告が述べているとおり、北朝鮮が大陸間弾道ミサイルのレベルの射程のミサイルを開発すると決定すれば、テポドン2を開発することになるだろう(2)。その搭載重量は、テポドン1より大きなものとなる。

テポドン2は、まだ一度も飛翔実験がされていない。NIEは、テポドン2の飛翔実験の準備ができていると1998年以来、報告している。たとえそれが本当だとしても、だからといって、北朝鮮が飛翔実験を開始すると決めたらすぐにテポドン2を実用可能なミサイルにできるというわけではない。

テポドン2は、北朝鮮がこれまで製造・実験してきたミサイルと相当異なっている。テポドン1より相当大きく、最大直径は、テポドン1の2倍近くになる。体積は、テポドン1の3倍となり、推進力も大ききくなる。その結果、ミサイルにかかる応力は、これまでのミサイルよりも厳しいものになる。さらに、北朝鮮は、テポドン2の大きな第1段階部分で4つのエンジンを束ねて使う方法を初めてとると推測される。これは、ミサイルの複雑さをますことになる。また、テポドン2についての議論のほとんどは、第3段階を持つものになると想定している。テポドン2が持つことになっている射程を得ようとすると、普通、第3段階が必要となるからである。しかし、北朝鮮は、これまで第3段階の打ち上げに成功していない。

そのうえ、北朝鮮は、長距離ミサイルの大気圏再突入熱シールドの飛翔実験を行っていない。弾頭の運搬用にミサイルを使おうとすれば、この実験が必要である。

これらの不確かさの結果、テポドン2の初期実験が成功すると推定する根拠はない。たとえ成功したとしても、ミサイルの信頼性を推定するには、何回かの実験−−少数ですむとしても2回以下ということはない−−が必要となる。北朝鮮は、1回か2回の実験に基づいて配備するかもしれないが、その場合は、このようなミサイルを使う能力についての同国の確信は、非常に低いものとなるだろう。

ミサイルの信頼性を知るということは、搭載する弾頭の種類に関して、重要な意味を持つ。北朝鮮は、1個か2個の核兵器を作るのに必要なプルトニウムを分離したと考えられている。北朝鮮が実用可能な核兵器を開発したとしても、どんな指導者であれ、そのような貴重で数の限られたものを、信頼性の定かでないミサイルに搭載するようなことはせず、他の運搬手段用にとっておくことになるだろう。

テポドン2の射程についてもまた、議論がある。2001年12月のNIEは、、次のように述べている。2段階方式のテポドン2は「数百キログラムの搭載物を、最大1万キロメートルまで運ぶことが可能だろう。アラスカ、ハワイ、それに米国の大陸部の一部を攻撃するのに十分な距離である。」NIEは、第3段階を付け加えれば、その射程は、1万5000キロメートルにまで伸びると推定している。北米のどこにでも到達できる距離である(3)

これらの射程の推定は、テポドン2に使われる技術が、テポドン1のものより相当いいということを前提にしたものである。とりわけ、ミサイルの本体が軽い材質でできており、さらに、エンジンはテポドン1より強い推進力を持つとの想定に立っているようである。これらの改善がなければ、たとえば、500キログラムの搭載物を載せた2段階方式のテポドンは、アラスカになら届くかもしれないが、米国の大陸部には届きそうにない。ハワイの主要な島々でさえもとどないだろう。また、、3段階方式のテポドン2の射程は、アラスカとハワイ全部に届くだろうが、米国大陸部の北西部分にしか届かないだろう。ということは、テポドン2の能力は、問題ではあるが、普通言われているようなものよりは、相当低いということになる。

テポドン2が上述のような改善を取り入れたものとなれば、これまでのミサイルと比べると相当の変更を意味する。設計や製造面に影響が出てくるから、不確かさが伴うことになり、飛翔実験で対処しなければならない。

米国に被害をもたらす搭載物を届ける短期的能力について心配するのなら、もっとありそうな脅威は、船から発射される短距離ミサイルだろう。長距離ミサイルより簡単な技術を使うもので、北朝鮮のような国でも現実的に使えそうである(4)。このような前方展開された脅威は、大陸間弾道ミサイルを使う場合と比べ、いくつもの利点がある。短距離ミサイルを使うから命中精度が高く、さらに、どこの国のものか特定できにくい。また、現在計画されている地上発射のミッドコース(中間飛翔段階)のミサイル防衛や、イージス艦を使ったミサイル防衛では対応できず、沿岸の諸都市の周りに短距離ミサイル用の防衛システムを大々的に配備しなければならない。

 注:

  1. ノドンの半数必中界[CEP]は、数キロメートル以上と見られている−−ミサイルの半分がこの半径の中に着弾するということ。)
  2. National Intelligence Council, Foreign Missile Developments and the Ballistic Missile Threat Through 2015, September 1999, available at http://www.cia.gov/nic/pubs/other_products/foreign_missle_developments.htm
  3. National Intelligence Council, Foreign Missile Developments and the Ballistic Missile Threat Through 2015: Unclassified Summary of a National Intelligence Estimate, December 2001, available at http://www.cia.gov/nic/pubs/other_products/Unclassifiedballisticmissilefinal.htm
  4. National Intelligence Council, Foreign Missile, September 1999.