核兵器
2008.6.10

再処理工場の製品からプルトニウムを取り出すのは簡単と米国立研究所

2006年11月24日の記者会見で、日本原燃の兒島伊佐美社長は、六ヶ所再処理工場の製品(ウラン・プルトニウム混合酸化物=MOX)からプルトニウムを分離することは「現実としては不可能だ」と述べましたが、アルゴンヌ米国立研究所の報告書は、分離は簡単と言っています。

これは、米国の軍縮問題専門誌『アームズ・コントロール・トゥデー(ACT)』誌(2008年4月号)掲載の論文「再処理再考:国際原子力パートナーシップ(GNEP)の国際的側面」が指摘しているものです。論文を書いたのは、核問題の専門家フランク・フォンヒッペルとエド・ライマンの二人です。

米国エネルギー省の委託でアルゴンヌ国立研究所が作成した報告書『軽水炉及び高速炉燃料サイクルに対する共抽出の影響』(2007年5月31日付, pdf)は、プルトニウムとウランを50対50の割合で抽出する再処理方法「共抽出」が炉の運転と核拡散に与える影響を分析したものです。報告書は、共抽出が核拡散抵抗性を持つとの「主張は、議論の余地がある。なぜなら、共抽出されたウランとプルトニウムを分離するのに必要なのは、燃料化学のほとんどの専門家によく知られている化学プロセスを一つ追加することだけだからである。」と述べています。

つまり、六ヶ所村再処理工場の製品からプルトニウムを単体で取り出すのは簡単だということです。

さらに、報告書にあるデータは、六ヵ所の混合酸化物製品を金属に変えれば、そのままでも核兵器ができることを示しています。プルトニウムを単体で取り出さなくても核兵器ができるということです。

以下、アルゴンヌ報告書とGNEP及び六ヵ所再処理工場の製品の関係、報告書と対立する日本原燃や日本政府の主張について簡単にまとめました。

M.T.

  1. 変質するGNEP
  2. 日本型プルサーマルの問題点
  3. 六ヶ所の製品からプルトニウムを取り出すのは簡単
  4. 六ヵ所再処理工場の製品でできる核兵器
  5. 六ヵ所再処理工場に核拡散抵抗性はない
  6. 日本原燃の主張
  7. 日本政府の主張
  8. 参考:


変質するGNEP

ブッシュ政権が2006年2月に発表したGNEPは、従来の再処理方法(ピューレックス法)について、次のように批判して新しい再処理方法を開発することを提唱していました。

  1. プルトニウム以外の超ウラン元素──ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム──が廃棄物となる。これらは、エネルギー源となるが、毒性が強く、処分場の設計に悪影響を及ぼす。
  2. ピューレックスで取り出される純粋なプルトニウムは核兵器に使われうる。

Why do we need advanced fuel separation technology? (pdf)

ピューレックス法でゴミの中に入るプルトニウム以外の超ウラン元素(ネプツニウム、アメリシウム、キュリウム:マイナー・アクチニドと呼ばれる)は、寿命が長く、毒性が高い上に、発熱量が大きいものです。必要な処分場の面積は、廃棄物の量だけでなく発熱量によって規定されます。それで超ウラン元素をまとめて取り出して、必要な処分場の面積を減らすとともに、プルトニウムをマイナー・アクチニドと混ぜることで核兵器用に使いにくくし、これで作った燃料をABRという特殊な炉で燃やして(中性子を当てて核変換させて)「消滅」させてしまおうというのが、GNEPで最初に提案されていた概念です。

ところが、提唱された再処理方法及び核燃料サイクルは簡単には開発できそうにもないというので検討されているのが六ヶ所再処理工場と同じ方法の使用です。報告書は次のように説明します。

「[この再処理方法(群分離)は]新しいもので、商業的燃料サイクルで使われたことがなく、従って、経済的不利や技術的非確実性を伴う。・・・このため、別の燃料サイクルも検討されている。このような別の燃料サイクルの一つが・・・ウラン・プルトニウム共抽出プロセスの使用である。アレバが提案しているCOEX方法は、このような共抽出プロセスの一つである。COEXプロセスでは、軽水炉の使用済み燃料から取り出される純粋なウランとプルトニウム・ウラン混合物とが二つの主要製品となる。これらの二つの製品は、後に、既存のあるいは改良型の軽水炉でリサイクルするためにMOX[混合酸化物]燃料を作るのに使われる。」

(p.7)

つまり、報告書で分析しているのは、六ヵ所再処理工場の技術を提供したアレバ(旧コジェマ)社のCOEXです。要するに研究対象は日本型プルサーマルです。

ただし

報告書は、ウラン・プルトニウムの共抽出が核兵器抵抗性を持ちうるという見解を所与のものとして扱っており、ウランとプルトニウム(あるいは超ウラン元素)の分離の簡単さを無視している。従って、本報告は、共抽出プロセスの潜在的影響についてではなく、物理の問題についての詳細に分析したものである。

p.40


日本型プルサーマルの問題点

報告書はCOEXの問題点を次のように説明しています。

しかし、COEXの欠陥となりうるのは、マイナー・アクチニド(MA)[ネプツニウム(Np)、アメリシウム(Am)及びキュリウム(Cm)]が回収されず、廃棄物として捨てられることである。マイナー・アクチニドは、使用済み核燃料の危険の相当部分を構成するものであるから、処分場の効果的利用を達成するには、これらについての解決方法を見出さなければならないだろう。提案の中には、MAを高速炉のターゲットとして──あるいは、熱中性子炉のターゲットとしてさえ──使うというのがある。ターゲットの開発、製造、燃料サイクルにおける管理(取扱い及び使用)に関わる経済的不利について評価する必要がある。また、MAターゲットを使用すると、物理防護の要件が増えることにもなる。なぜなら、これらの物質の一部は(たとえばネプツニウム237)は、核拡散の問題を伴うからである。

p.8

つまり、こういうことです。プルサーマルの場合は、軽水炉でプルトニウムを燃やす過程で、プルトニウムに加えてマイナー・アクチニドも大量に発生します。この使用済み燃料をさらに再処理するのは技術的に困難です。この使用済燃料をそのまま処分すると、普通の使用済燃料より発熱量が大きいから、必要な面積は大きくなり、最初の再処理で節約できたスペースはご破算となります。ところが、このマイナー・アクチニドをまとめて燃やすのは簡単ではないと報告書は指摘します。しかも、マイナー・アクチニドで核兵器ができてしまうというのです。GNEPの当初の構想は明らかに瓦解しています。

六ヶ所の製品からプルトニウムを取り出すのは簡単

報告書は続けて、兒島社長の主張の誤りを示す事実を述べています。

この共抽出という方法(ターゲット使用をしないもの)は、拡散抵抗性のある分離プロセスとして、先進核燃料サイクルで使うことが推奨されているが、この主張は議論の余地がある。なぜなら、共抽出されたウランとプルトニウムを分離するのに必要なのは、燃料化学のほとんどの専門家によく知られている化学プロセスを一つ追加することだけだからである。

p.8

つまり、核燃料に関する化学的知識があれば簡単に六ヶ所の製品からプルトニウムを分離して取り出せるということです。「現実として不可能」なんてことはありません。

六ヵ所再処理工場の製品でできる核兵器

報告書は、共抽出の製品についてさらに次のように述べています。

プルトニウムとウランの50-50の混合物の場合、その[裸の球体の]臨界量は、[兵器級プルトニウムの]5.6倍となる。

pp.32-33

つまりは、「分離しなくとも、混合物は直接核兵器に使用できる」ということだとACT誌の論文は指摘しています。量は少し大きくなるものの六ヶ所再処理工場の製品(混合酸化物)を金属に変えれば、そのままで核兵器ができるということです。長崎で使われたプルトニウムは約6kg、広島で使われたウランは約64kgでした。量の違いは10倍強です。広島型と長崎型は仕組みが異なりますが、長崎型に高濃縮ウランを使う場合は、プルトニウムの3倍ほどが必要となります。これらと比べれば、5.6倍という差がそれほど大きなものでないことが分かります。

六ヵ所再処理工場に核拡散抵抗性はない。

つまり、核兵器への転用という点で、六ヵ所再処理工場の混合酸化物(MOX)製品は、もともとのピューレックス法の製品(二酸化プルトニウム)と同様に扱う必要があるということです。まとめるとこうなります。

  1. そもそも、二酸化プルトニウムを金属プルトニウムにし、それを使って核兵器を作る技術を持っているような集団であれば簡単にMOX粉末製品からプルトニウムを取り出して金属にできる。8kgのプルトニウムで核兵器が一発できるとして、混合物なら16kg盗めば良いわけで、重さにそれほど差ができるわけでもない。
  2. 50:50のMOX製品は、金属にすればそのままでも核兵器に使える。

日本原燃の主張

2006年11月24日の記者会見で、日本原燃の兒島伊佐美社長は次のように述べています。

MOX燃料になっているものを物理的にもういっぺん剥がすことは、或いは、理屈の上では可能かも知れない。しかし、現実から見たときに、それはまず不可能だ。それはすべての設備、また再処理をしていくということになるだろうが、設備や扱いを見ていったときに、MOX燃料からもう一度そういうふうに分離してうんぬん―というのは現実としては不可能だ。

 これは米国がかつてのカーター大統領のときだが、日本のMOX燃料をつくって、MOXの粉末をつくって取り出すという方式について、米国が技術者を含めて慎重に検討した結果、それで行こう―となったわけで、私どもは核不拡散性に十分貢献していると。これは国産の技術だが、そういうふうに認識している。

この発言は、再処理工場の製品に関するものですから、MOX燃料というのは、再処理工場のMOX粉末製品のことです。軽水炉で使うプルサーマル用MOX燃料は、六ヵ所のMOX製品にさらにウランを混ぜて作ります。

日本政府の主張

日本政府は、例えば、2006年1月27日、次のような見解を発表しています。

六ヶ所工場においては、純粋なプルトニウム酸化物単体が存在することがないように、ウランと混合したMOX粉末(混合酸化物粉末)を生成するという技術的措置も講じられている

これは、2006年1月26日に米国エドワード・マーキー議員らが加藤良三大使宛てて出した次のような書簡について示されたものです。

私たちは、2006年の六ヶ所でのアクティブ試験を中止し、それを六ヶ所再処理工場の運転を延期するというより広範な合意の一環とするよう要請します。・・・なぜなら、このような行動が、核軍縮と核拡散防止を推進し、テロリストたちによる核兵器の獲得を防止するのに役立つだろうからです。



参考: