核兵器>ミサイル防衛
2004.4.16

米国弾道ミサイル防衛計画とイージス艦配備

レーガン大統領の「スターウォーズ」演説音声原文の21年目の記念日を翌日に控えた3月22日、米国のゴードン・イングランド海軍長官が、「ミサイル防衛会議」で、今年秋からイージス艦を日本海に配備すると発表して話題を呼びました。また、それと相前後して、「ミサイル防衛庁(MDA)」が議会の委員会で、予算について説明しました。これらの演説、証言、予算書を中心に、米国のミサイル防衛計画の概要をまとめました。

 出典: 二つの演説

 上述の二つの演説、本文中でリンクを張ったものの他につぎのようなものがある。


目次


詳細・Q&A


弾道ミサイル防衛(BMD)概略


弾道ミサイルとは?

ロケットの推進力で上昇し、燃料が燃え尽きた後は、弾道状の飛翔パターンを取って目標まで到達するミサイル。

距離による弾道ミサイルの分類は?

通常つぎのように分類される。

1)SRBM Short-range ballistic missile (< 1,000 km) 短距離
2)MRBM Medium-range ballistic missile (1,000-3,000 km) 準中距離
3)IRBM Intermediate-range ballistic missile (3,000-5,500 km) 中距離
4)ICBM Intercontinental ballistic missile (5,500+ km)  大陸間弾道弾(長距離)
 * 2)と3)をあわせて、中距離弾道弾と呼ぶこともある。

  ICBMの5500km以上というのは、米ソの間の「戦略兵器制限条約(SALT)」の規定によるもので、米国本土の北東国境とソ連本土の北西国境の最短距離に由来する。
  米ロが1999年9月に正式に交わした合意文書では、ABM条約の下で配備を許された戦域ミサイル防衛システム(TMD)の開発において、射程3500km以上のミサイルに対する迎撃実験を行ってはならないとした。これは、ABM条約そのものが失効した現在では無効。
  1987年に米ソが署名し、88年に発効した中距離核戦略(INF)条約は、射程500−5500kmの地上配備の弾道ミサイルの廃棄を定めた。

参考: 「軍備管理協会」のページ

弾道ミサイルの飛翔段階とは?

弾道ミサイルの飛翔段階

MDAのパンフ(pdf)より最初の図

1)ブースト(推進=加速)段階 ミサイルの燃料の燃焼中 
 射程1万kmほどの「大陸間弾道弾(ICBM)」だと4分ほどで燃え尽きて大気圏外(高度約100km以上)に突入

  ・上昇段階とも呼ばれることがあるが、つぎのミッドコースでも上昇は続くので混乱に注意。

2)ミッドコース(中間飛翔)段階 
 1)の後、慣性で上昇して最高点に達した後下降
 ICBMの場合、20分ほど続く

   ・この段階で、弾頭がロケットから分離される。実際には弾道の入った「容器」が放出されるが、これを、大気圏内に戻ってくるものという意味で「再突入体(RV=Reentry Vehicle)という。

3)ターミナル(最終段階) 
 大気圏内再突入に始まる最後の段階 1分程度

米国のミサイル防衛システムにはどのようなものがあるのか?

飛翔段階によってつぎのようなものがある。

  *クリントン政権時代は、米国全土を大陸間弾道弾攻撃から守るものを「全土ミサイル防衛(NMD)」システム、海外に出て行った米軍の部隊や同盟国を射程の短いミサイルの攻撃から守るものを「戦域ミサイル防衛(TMD)」システムと呼んでいた。

ミッドコース段階

ターミナル段階

 

 短・中距離に対処 ブロック2004での配備はないTHAAD グローバルセキュリティーのサイトより
 単段階のロケットに載せた体当たり装置が分離して、敵の弾頭に当たる方式。
 移動発射システムを使う。
 ミッドコースからターミナルへの移行部分での迎撃を目指す。
   ・95年4月から99年3月まで6回続けて迎撃実験に失敗した後、99年6月10日と、8月2日に迎撃に成功。この後実験は中止されている。つぎの迎撃実験は、2005年の予定。プラット・アンド・ウイットニー燃料混合工場での爆発事故の影響で、予定が遅れる可能性も。

 参考:グローバルセキュリティーから

参考:MDAリンク 写真多数

 敵機の撃墜のために1960年代に開発が開始された地対空ミサイル。
 現在は、短・中距離ミサイルと飛行機の両方を迎撃することが期待されている。
 MDAの文書によっては、短距離用と書いているものもある。
 単段階のミサイルでそのまま敵の弾頭に体当たりして破壊する方式。
 トラック型移動可能発射システムを使う 

  ・このほか、イージス艦を利用した海軍海軍地域防衛(NAD)というシステムでターミナル段階に入った短・中距離ミサイルを迎撃するという計画があったが、コスト増大とスケジュールの大幅遅延のため、2001年12月14日中止が発表された。復活の可能性もある。

  ・独伊との合同計画(MEAD)やイスラエルとの合同の戦域ミサイル防衛ミサイル(アロウ)開発計画もある。MEADはまだ初期段階。アロウはイスラエルで2000年から運用されている。

ブースト段階

05年度予算では、GMDに回すためにABL用4億5000万ドルを削減
    ・このほか、ブースト段階用宇宙配備キネティック・エネルギー(体当たり式)システムというのもあり、1000万ドルの研究費が05年度予算に入っている。(04年度予算要求には入っていたが、政治的にも技術的にも問題があると認識して引っ込めたが、今回また要求)

2005年度米国ミサイル防衛予算の総額は?

ミサイル防衛予算合計 102億ドル (前年比 13%増)
 内訳は次の通り。大半がミサイル防衛庁

ミサイル防衛とは別の名目でつぎが要求されている。 

参考:軍事予算総額 4020億ドル  (04年度予算要求比 220億ドル増)
(イラク、アフガニスタンでの作戦、対テロ戦争は入っていない。)

ブロック2004とは?

ブッシュ政権は、2年間の期間をブロックと読んでいる。ブロック2004は、2004年10月ー2005年末までに配備あるいは開発されるシステム。ただし、ブロック2006、ブロック2008は、普通の暦年をさし、それぞれ、2006年1月ー2007年12月、2008年1月ー2010年12月をさす。米国の2004年度は、2004年10月1日から2005年9月30日までなので予算文書を見るときは注意を要する。
 配備に関していうと、兵器システムの技術的目標を定めて、それが達成できるまで実験を続け、完成した時点で配備するというのではなく、その時点で存在するものを配備するという発想。
(「ブロック2006における開発」という風に、2年で行う開発計画についても論じられる。)

以前はシステムの発展レベルについてブロックという言葉を使っていたので複雑。たとえば、イージス艦に搭載するスタンダード・ミサイル(SM)は、SM2の開発をブロック1からブロック4まで進めた後、大幅な変更を加えたSM3の開発に入り、そのSM3は、ブロック1とブロック2に分けて行っているという具合。ちなみに、日本は、ブロック2の研究に協力しているが、日本がミサイル防衛用に導入を決めたのはブロック1の方。

ケイディッシュ長官:

「ブッシュ大統領は、2002年12月16日 2004年と05年にミサイル防衛システムの配備を始めるよう指令をだした。大統領の指令は、われわれが配備する最初のシステムは限定的運用能力しか持たないことを認識するものである。大統領は、そのときにあるものを配備して、その後配備したものを改善することを指示した。」

地上配備中間飛翔段階(ミッドコース)防衛(GMD)システム

  クリントン政権でNMDと呼ばれていたもの

GMDの基本的仕組みと現状は?

   大陸弾道弾(ICBM)迎撃用の「地上配備中間飛翔段階(ミッドコース)防衛(GMD)」システムの場合、ブースター・ロケットで「大気圏外迎撃体(EKV=体当たり装置)」を大気圏外に運び、EKVがロケットから分離して、EKVに装備された赤外線センサーを使って敵の弾頭を判別し、体当たりして破壊するという仕組み。この際、さまざまな探知・追尾システムの情報を使って敵の弾頭の位置を特定する。

MDAのパンフ(pdf)の4ページより

1)早期警戒衛星で敵のミサイル発射を探知する。
 「防衛支援プログラム(DSP)」(30年前から配備されているもの)
 「高軌道宇宙空間配備赤外線システム(SBIRS−high)」(1996年から開発。衛星6個からなる予定。2006年6月の静止衛星打ち上げ予定が2007年秋に延期と『エア・ディフェンス・デイリー』が4月1日報道。)

2)上の情報に基づいて、早期警戒レーダーでミサイルを確認。

 地上配備の「改良型早期警戒レーダー(UEWR)」
  カリフォルニア州ビール 2004年秋までに運用可
  英国ファイリングデイルズ 2003年に英国とここの早期警戒レーダーの改修について覚え書き調印
  グリーンランドのテューレ デンマーク政府とこの早期警戒レーダーの改修について交渉中

3)「戦闘管理/指揮・統制・通信(BM/C3)センター」(コロラド)がミサイル防衛用特殊レーダーに指示を出すとともに、「地上配備迎撃ミサイル(GBI)」の発射を命令。

4)「Xバンド・レーダー(XBR)」で敵ミサイルを捕獲・追尾

 2002年8月31日、MDAは、XBRを海上配備にすることを発表。
 アラスカ沖に配備予定
 テキサスの造船所で建設中、 配備は、少なくとも1年先
   厳しい波や風の状況下での機能について会計検査院(GAO)が疑問を提示
   XBR配備までは、アリューシャン列島西端シェミヤ島にあるコブラ・デイン・レーダーで代用の予定。(XBRは当初、シェミヤ島に地上配備予定だった。)

5)コブラ・デイン・レーダー

  4)のXBRが配備できるまで、能力の劣るこのレーダーで代用。
  アリューシャン列島西端のシェミヤ島に1970年代に建設。
  旧ソ連のカムチャッカに向けたミサイル実験の監視が元の目的。そのため、レーダーは北西を向いている。また、リアルタイムでデータを送る能力を持っていない。リアルタイム処理能力を備えるために、2004年7月頃に改良用ソフトウェアーを受け取る予定。レーダーの能力も高まるが、向きは変わらない。このレーダーを使った飛翔実験の予定はない。
  参考: UCS(憂慮する科学者同盟)のページ 図も

6)XBRは、高解像の追尾データをBM/C3(戦闘管理・指揮・管制・通信)に提供。

7)BM/C3は、「飛翔中迎撃体コミュニケーション・システム(IFICS)」を通じて、迎撃ミサイルに最新情報を送る

8)迎撃ミサイルに搭載された「大気圏外迎撃体(EKV)」は、最終的には、EKV自体に備え付けられた赤外線センサーによって敵のミサイルの弾頭に向かい、体当たりしてこれを破壊する。

*弾頭追跡衛星が宇宙配備されれば、この衛星からの情報も使う。
  宇宙追尾・監視システム(STSS)
  ・以前は、「低軌道宇宙空間配備赤外線システム(SBIRS−low)」と呼称。
  2007年打ち上げ予定。2個で出発。最低でも、18必要。30が望ましい。
  当初予定されたこの衛生の囮の識別能力装備計画は延期と会計検査院(GAO)が報告している(2003年5月)

2005年度予算書:

「2004年秋に米国が配備できるものとして、われわれは、アラスカ州フォート・グリーリーに数基の迎撃ミサイル、アリューシャン列島のシェミヤ島イアレクソン飛行場の改修されたコブラ・デーン・レーダー、カリフォルニア州のビール空軍基地の改良された早期警戒レーダー(UEWR)、それにイージス監視追尾船1隻を想定している。2005年度[04年10月ー05年9月]を通して、われわれは、つぎのものを追加することによって、ミサイル防衛システムの能力を増強する。フォート・グリーリーとカリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地に迎撃ミサイル。英国のフライングデールズ空軍基地のUEWR。イージス巡洋艦・駆逐艦への海上配備ミサイル及び改良型レーダーの追加。ミサイル防衛システムのパフォーマンスを最大限にするための指揮・管制能力の追加。」p.5

今年秋から日本海に配備されるというイージス艦の役割は?

イージス艦搭載の改良型SPYー1レーダーを使って上のICBM迎撃用のレーダー網のお手伝いをすること。

2004年から短・中距離弾道ミサイル迎撃用に迎撃ミサイル(スタンダード・ミサイル=SM3)を搭載したイージス艦も配備する予定だったが、SM3の開発が遅れているので、地上配備ミサイル防衛(GMD)システム用にレーダー情報を提供することを目的として船だけ配備することに決定。

ABM制限条約とイージス艦の日本海配備との関係は?

弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約制限条約が、2001年12月の米国の脱退宣言によって、2002年6月13日失効したため、海上配備のシステムを本土防衛用に活用することが法的に可能となった。

1972年に米ソの間で署名され発効し、74年に改正されたABM制限条約は、全土防衛のために弾道弾迎撃ミサイル(ABM)を配備することを禁止していた。配備が認められていたは、首都又は大陸間弾道弾(ICBM)のサイロ(地下発射台)周辺のどちらか一ヶ所の半径150キロメートル以内の地域で、迎撃ミサイルの数は100基以下に制限されていた。また、この制限されたシステムに、海上配備の要素を利用することを禁止していた。これは、迎撃ミサイルを増やせば、相手国がそれを上回る数の攻撃ミサイルを増やそうとして、果てしない軍拡競争が続くことを恐れてのことである。

  *ABM条約第5条
「核締約国は、海上基地、空中基地、宇宙基地又は移動式地上基地のABMシステム又はその構成要素を開発、実験又は展開しないことを約束する。」

米国は、イージス艦に搭載したミサイルで大陸間弾道弾をブースト段階あるいはミッドコース段階で迎撃することを検討しているが、これはまだ先の話。2005年中に配備予定のSM3は、短・中距離のミサイルを撃ち落とそうというもの。

ゴードン・イングリッシュ海軍長官は、ABM条約と海軍の関係についてどういったのか?

「2002年ブッシュ大統領は、海軍をミサイル防衛の最前線に押し出す二つの重要な発表を行った。まず第一に、海上配備の弾道ミサイル防衛システムを禁止していた1972年ABM条約からの脱退によって、海軍がNMD(全土ミサイル防衛)能力を実験・開発する道が開かれた。」

「第2に、2002年末、ブッシュ大統領は、計画の速度を上げ、ミサイル防衛庁(MDA)に対し、2004年末までに初期的配備能力を持つように、そして、そこに海上配備の要素も含めるように要請した。これも、海軍の既存のテクノロジーと、その世界的機動力に対する力点・焦点を大きくする結果となった。」

地上配備ミッドコース防衛(GMD)用の地上配備迎撃ミサイル(GBI)の配備予定は?

 ブロック2004合計     20基

  ・ワシントン・ポスト紙によると、5−6月に、サイロにGBIを設置し始める計画。ただし、GBIはフォート・グリーリーへ飛行機で搬入する予定だが、フォート・グリーリーから約20kmの地点にあるアラスカ州アレン陸軍飛行場が重さに耐えられないことが判明したとの報道がある。(2004年4月1日 Global Security Newswire)

予算文書:

「初期的防衛運用準備態勢完了宣言の予定日は、2004年秋だが、われわれは、国防長官に弾道ミサイル防衛システムを、1基のICBMに対する防衛能力が出来次第、アラート状態に置くことを提案する。」

地上配備迎撃ミサイル(GBI)の配備は、国内2カ所だけか?

第三のサイトを検討している。

ケイディッシュ証言:

「ブロック2006から、GBI及びイージスSM3迎撃ミサイルを増やし、新しい能力(THAADなど)、センサーのネット(二つ目の海上配備ミッドコース・レーダー及び前方配備可能レーダー)を拡大し、C2BM/Cシステム統合を強化する。・・・・われわれの改善計画は、最高10基のGBIをフォート・グリーリーのサイトに追加し、場合によっては、さらに最高10基を第3のサイトあるいはフォート・グリーリーに配備するための長期的調達計画を開始するというものである。」p.11

「ブロック2006においては、適切な時期に米国外の場所で第三のGBIサイトを建設するという方向に動く準備をする。」p.13

地上配備ミッドコース防衛(GMD)システムの配備開始で対象としている敵国は?

北朝鮮であると、トーマス・クリスティー国防省の運用実験評価ディレクター(トーマス・クリスティー)の2003年度報告書が述べている。

  「初期的防衛運用(IDO)能力は、北朝鮮によるICBM攻撃シナリオに符合する4つの交戦シークエンス・グループについて評価されることになる。」

陸上配備のシステムについて国防省の運用実験・評価の責任者はなんと言っているか?

ジャック・リード上院議員(民主党:ロードアイランド州選出)
「つまり、現在の時点では、実際のシステムが本物の北朝鮮のミサイルの脅威に対処できるかどうか確信が持てないという言うことか。」

トーマス・クリスティー運用実験評価ディレクター
「それで正しいと思う。」

  ・これは、北朝鮮が現在米国を攻撃するミサイルを持っているのか、米国に攻撃をかける気があるのかという分析とは別問題。参照:北朝鮮のミサイルの脅威の評価

特にハワイについては:

 XBRが配備されるまで追尾の役割をするコブラ・デイン・レーダーは、上で見たとおり、北西に向いているので、北朝鮮からハワイに向けてミサイルが発射された場合役に立たないとの指摘がある。頼りにするのは、日本海に配備するイージス艦となるが、やはりXBRの代わりにはならない。

 秋に配備予定のシステムでハワイを守れるのかのハワイ選出ダニエル・アカカ上院議員(民主党)の質問に対する答え:

トーマス・クリスティー運用実験評価ディレクター
 「現時点では、どちらとも言えない。」

アカカ上院議員:
 「ハワイを守るために、既存の艦船装備のレーダーを使う計画になっているが、それは、通常の弾道ミサイル防衛レーダーよりも能力が劣り、元々、長距離ミサイルの追尾用に設計されたものではないと理解している。」
 「私は、ハワイについて心配している。9月に運用が始まるこのシステムで、ハワイ州が守られると確信を持っていいか。」

トーマス・クリスティー運用実験評価ディレクター
「十分な分析をしていない。それは、われわれが検討しているシナリオの一つだ。」

   2004年3月11日上院軍事委員会証言

参考:
上記委員会にクリスティーが提出した文書(pdf)

地上配備迎撃ミサイル(GBI)の迎撃実験の結果は?

8回の迎撃実験で、5回成功、3回失敗ということになっている。
配備予定の迎撃ミサイルに使われる3段式ブースター・ロケットを使った実験は行われていない。全部、2段式ブースター・ロケットを使っている。

迎撃実験(統合飛翔実験=IFT)の結果はつぎの通り。

*この実験の後、IFT11,12をキャンセル。実験用ブースター・ロケットの欠陥が3回の失敗のうち、2回に関係しているとの判断が背景にある。

今後の地上配備迎撃ミサイル(GBI)の実験計画は?

配備用のブースター・ロケットの開発が原因で、迎撃実験が遅れている。まず、ブースター・ロケットの単純な飛翔実験を行ってから迎撃実験を行う予定。ブースター・ロケットの開発は、最初ロッキード・マーティン社が行っていたが、開発が遅れていたため、2002年3月オービタル・サイエンシズ社にも開発が委託された。現在2社が別々に開発を進めている。MDAは、2003年11月7日、今年秋から配備の始まる予定の10基では、オービタル・サイエンシズ社のブースター・ロケットを使うと発表した。このロケットを使った迎撃実験は秋の配備に間にあいそうにない。つまり統合実験をしていないものが配備されるという計画。

足踏み状態のロッキード・マーティン社の実験計画

ペンタゴンは、IFT10の失敗の後、IFT11、IFT12をキャンセルするとともに、当初計画の迎撃実験IFT13もキャンセルし、3回のブースター・ロケット開発実験をIFT13シリーズとして行うことを決定した。13Aがロッキード・マーティン社製、13Bと13Cがオービタル・サイエンシズ社製のロケットの実験。

IFT13Aは、無期限延期となっている。これは、ロッキード・マーティン社のブースター・ロケット用のプラット・アンド・ウイットニー燃料混合工場で2003年8月7日と9月12日に爆発事故が起きたため。

2004年1月9日に行われたロッキード・マーティン社製ロケット・ブースター検証実験BV5は、2003年8月予定だったもので、IFT13Aの前の段階。

オービタル・サイエンシズ社製ロケットの飛翔実験

 2003年8月16日 BV−6(ブース他・ロケット検証実験) 
 2004年1月26日 IFT13B  迎撃実験ではない。

 つぎの飛翔実験
 2004年6月? IFT13C 2003年12月の予定が延期 
    ワイヤリングの問題。迎撃実験ではないが、迎撃の可能性も。標的はアラスカ州コディアック島から発射

 つぎの迎撃実験の当初予定 
 IFT14 2004年5月 
 IFT15 2004年6月 イージスSPY1Bレーダーの追尾能力を使う
標的はアラスカ州コディアック島から発射。迎撃ミサイルはクワジェリン環礁から。
   IFT13Cの延期で14、15も遅れる。

*IFT15Aという標的ミサイルのコディアック島からの打ち上げ実験が別にある。レーダーの能力テスト。

*今年配備されるシステムは、コブラ・デイン・レーダーを利用することになるが、これを使った飛翔実験は予定されていない。

地上配備迎撃ミサイル(GBI)実験の問題点をまとめると?

政府機関の報告や、NGOの分析を要約すると:

これまで行われた迎撃実験は、配備されるものより速度の遅いブースター・ロケットを使って、毎回同じパターンで、しかも、見分けやすい囮を使ったもので、しかも、模擬弾頭が自分の位置を知らせる標識を備えている。実際に弾頭が飛んできたとき、今年から配備されるシステムが役に立つかどうか判断するのに役立つ情報を提供できるようなものではない。

これまでの実験は、カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から発射した「敵ミサイル」をマーシャル諸島のクワジェリン環礁から発射した迎撃システムで迎撃するというもの。

米国のUCS(憂慮する科学者同盟)のホームページにある「実験計画の限界と不自然さ 2002年12月(Limitations and Artificialities of the Testing Program December 2002)が挙げる問題点をまとめるとつぎのようになる。

1)模擬ブースター・ロケットの使用
実験 実際の事態
ロケットの段階数 2段階 3段階
ロケットの速度 2.2km/秒 7−8km/秒
EKVと標的弾頭との相対的衝突速度 7.4km/秒 2倍近く
EKVが弾頭を囮から見分け、動いて弾頭を破壊する時間 1/10に
ブースター・ロケットがEKVに与える衝撃力 10倍

模擬弾頭の発射には、3段階式のブースター・ロケットを使用しており、EKVを運ぶ模擬迎撃ミサイルになぜ3段階式のものが使えないはずはないのだが。

参考:The Welch Commission Report on Reducing Risk in Ballistic Missile Defense Flight Test Programs (Report #2, November 1999)(EKVがブースター・ロケットの衝撃力に耐えられるかどうかについて疑問を提示したパネル(議長:レアリー・ウェルチ退役将官)の報告書、pdf

2)迎撃側に事前に与えられる詳しい情報

実験のタイミング
標的の軌道
迎撃地点
弾頭、囮などの形状

3)同じ迎撃高度及び幾何学的条件

標的ミサイル発射地点 カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地
標的ミサイル発射方向 マーシャル諸島クワジェリン実験施設に向けて(7500km)
迎撃ミサイル発射地点 マーシャル諸島クワジェリン環礁のメック島
迎撃ミサイル発射時間 標的ミサイル発射から約20分後
迎撃地点 迎撃ミサイルの発射地点の北約700km
迎撃高度 230km

衝突の仕方 EKVの弾頭の後ろから。EKVと弾頭ともに落下軌道に入ってから。

 低い迎撃高度、相対的衝突速度が選ばれているのは、地上及び宇宙空間に飛散する残骸を減らすためか。

実際の迎撃高度の可能性 1000kmも
 北朝鮮からアラスカに向けてミサイルが発射された場合
 主契約社であるボーイング社のNMDプログラム・マネージャー(ジョン・ペラー博士)の証言 (1999年2月24日 上院軍事委員会戦略戦力小委員会)

・標的がバンデンバーグ空軍基地以外の場所(アラスカ州コディアック島)から初めて発射されるのは、IFT15(2004年6月予定だが遅れる見込み)
・迎撃ミサイルが実際の配備地(バンデンバーグ空軍基地)から初めて発射されるのは、IFT17(2005年初頭予定)

4)同じ時間帯での実験

クワジェリン環礁の日没の2−4時間前
太陽が同じような位置にいて、EKVの後ろから弾頭その他の物体を照らす。
太陽に照らされているかどうか、どの程度照射されていたかが、赤外線探知に与える影響が大きい。

5)レーダー・ビーコンの使用

模擬弾頭にGPS受信機あるいは「Cバンド・ビーコン」(レーダー標識)を取り付けてあって、弾頭が自分の位置を最初から知らせるたかたちでの実験となっている。

 ・オアフ島カエナ・ポイントのFPQ14「Cバンド・レーダー」でこのビーコンを追尾する方式。

政府は、実際の配備状況では、レーダーが敵ミサイルの情報を初期段階で防衛側に与え、それに基づいて、いつどこの迎撃ミサイルを発射すべきかが決められることになるが、今はそのレーダーが機能していないから、この実験の方式をとっていると説明する。予算書によると、迎撃ミサイルの配備が始まった段階(秋)では、実戦用には、カリフォルニア州ビール空軍基地の早期警戒レーダー(UEWR)がこの役割を果たすことになっている。

あまりにも正確な情報が最初から与えられる方式の実験なので、IFT6では、防衛側が迎撃ミサイル発射前に計算した迎撃地点と実際の迎撃地点との差はわずか400mだったという。実際の状況では、本物の弾頭と囮とが数十キロの範囲に渡って広がった「標的群」に向けてEKVが発射されるという事態が大いにあり得る。そこから本物を探し、それに向かって急激な移動をするのと、最初から本物の位置が正確に分かっているのとでは当たる確率が大きく異なる。

現開発段階でこういう実験をするというのは正当化されうるが、これを、実際の状況での能力を実証する実験と見てはならない。

6)見分けやすい囮

大気圏外で迎撃するシステムの難しさの一つは、大気圏外では空気抵抗がないため風船も弾頭も同じように飛ぶということにある。ブースト段階を終えたミサイルから本物の弾頭とともに囮が放出されると、迎撃システムにとって本物を見つけるのは難しい。これまでの実験では、区別のつきやい囮が使われている。だが、実際には、本物に似た囮が使われるだろうし、また、場合によっては本物を球状のバルーンの中に入れてしまって、他の球状のバルーンとともに飛ばすという手もある。

使われた標的群

 最初の3回
  模擬弾頭(長さ2m以下、基底部直径1m以下、円錐状)  大きなバルーン1個(直径2.2m。球形。6倍の明るさ)

 つぎの2回
  模擬弾頭(長さ2m以下、基底部直径1m以下、円錐状)  大きなバルーン1個(直径1.7m。球形。3倍の明るさ)

 6回目(IFT8)
  模擬弾頭(長さ2m以下、基底部直径1m以下円錐状)  大きなバルーン1個(直径1.7m。球形。ずっと明るい)+小さなバルーン2個(0.6m。球形。1/6の明るさ)

 ・現実的な囮を使われた場合にどうなるかを示したUCSのアニメーション



  実際の飛翔体に対するコブラ・デインの能力を試す実験は、向こう3年間はない。
  北西を向いたままの位置関係から、南方で発射される迎撃実験のミサイルを追尾することはできないため、海上・空中発射ミサイルでしか能力を試験することができないが、その資金がないとペンタゴンは主張。
 北朝鮮から、ミサイルがハワイに向けて発射されるというシナリオではほとんど用をなさない。西海岸に向けたものも、追尾能力が劣る。

 *カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地から発射した「敵ミサイル」をマーシャル諸島のクワジェリン環礁から発射した迎撃システムで迎撃。将来、アラスカ州のコディアック島から発射した「敵ミサイル」をクワジェリンから発射した迎撃ミサイルで撃ち落とすという実験が計画されている。
参考: UCS(憂慮する科学者同盟)のページ

ミサイル防衛についての政府内部での評価検討はどうなっているのか?

 つぎの三つの政府文書がそれぞれ、急いで配備しても、有効なものになるとは言えないとの結論を下している。

1)運用実験・評価ディレクター(フィリップ・コイル)報告(pdf) 2000年8月10日

2)会計検査院(GAO)報告「ミサイル防衛:実験勧告に対応する措置はとられつつあるが、評価更新が必要」(pdf, 2004年2月:3月11日公表。秘密バージョンは2003年6月)

  議会の要請で、1)の勧告の実施状況について評価したもの

3)運用実験・評価ディレクター(トーマス・クリスティー)報告(pdf) 2004年2月(2003会計年度報告)

  ・「運用実験・評価局(OT&E)」は、国防省内に1983年に設けられた部局。国防省のさまざまな兵器システムが適切な実験を経てから配備されるように保証することを目指したもので、同時に、実験の監督権が文民のディレクターに移された。

  ・国防省は、最近、2001年から公開され、いろいろなホームページにでている1)を秘密文書に指定し、論議を呼んでいる。

コイル報告(2000年8月)は、なんといっているか?

コイル報告は、米国「全土防衛システム(NMD)」の実験が現実的なものでないことを指摘し、たとえば、つぎのようなことを考慮した迎撃実験を実施することなど50の勧告をしている。
  弾頭に似たオトリの使用
  迎撃ミサイルの複数発射(別のEKVが視界に入ったときのEKVの振る舞い)
  夜間の迎撃能力
  悪天候の影響

同時に、飛翔実験の欠陥がもっとも目立つものだが、シミュレーションや地上での実験の問題は、「さらに大きな影響」を与えるかもしれないと指摘している。飛翔実験の行えない状況については、シミュレーションに頼らざるを得ないからである。

時期的背景

2005年までにNMDを配備するには、アリューシャン列島西端のシェミヤ島でのXバンド・レーダーの建設に関する決定を2000年11月には下さなければいけないという時点での報告だった。シェミヤ島では極北の厳しい天候のため、夏の限られた期間しか工事ができない。2005年に間に合わせるには、2001年5月頃には建設を開始する必要があった。ABM制限条約は、ABMで守るICBM基地の周辺一五〇キロメートルの地域以外にABM用レーダーを設けることを禁止していた。条約を脱退するなら、5月から6ヶ月前、つまり、11月にロシアに通告する必要があったのである。

  ・後にブッシュ政権は、Xバンド・レーダーを海上配備型にし、テキサスで建設することに決定

 1999年月に成立した「1999年全土ミサイル防衛法」は、「技術的に実行可能な限り早期に」限定的NMDシステムを配備するのが米国の政策だと述べている。この「技術的実効可能性」についての一つの答えが報告書だった。報告書は、「計画の再編成をしない限り、提案されている配備スケジュールは実現しそうにない」と述べている。また、「初期的運用実験・評価(IOT&E)の開始予定の4年あるいはそれ以上の前の限定されたデータに基づく配備決定に力点を置くのは、大きな防衛調達プログラムとしては異例のことだ」とも指摘している。
 大統領選挙を直前に控えたクリントン政権は、報告書の提出を受けた後、配備についての決定を、この時点でしないことに決め、決定を次期政権に委ねた。

  *コイルは、1994年10月から2001年1月まで、国防省で運用実験・評価ディレクターとして務めた後、民間団体「防衛情報センター(CDI)」のシニア・アドヴァイザーとなっている。

GAO報告はなんと言っているか?

コイル報告の勧告は「今日的なものである。なぜなら、効果的な防衛能力の開発、実験、配備に関連した技術的課題・不確実性は、今でも、相当なものだからである。」

「飛翔実験に関する[コイル報告]の勧告のほとんどに対処しようとしているが、2004年9月までには終えることができない措置が多くある。」

「2004年9月に配備される限定的能力の構成要素のどれ−−迎撃ミサイル、発射コントロールノード、改良型レーダー、海軍の巡洋艦・駆逐艦に装備した前進配備イージス・レーダー−−も、配備される形態では飛翔実験が行われていない。」

2つのターゲットに2基の迎撃ミサイルを発射という実験は、2007年まで行われない。

「リハーサルのない、シナリオのない条件の下での」迎撃実験をする計画はない。

MDAは、2004年の配備の前に、「コブラ・デインと呼ばれる重要なレーダーの能力を飛翔実験で実証することになっていない。」

実際に使われる「3段階式のロケットを、迎撃実験に組み入れたかたちでテストしていない。」

クリスティー報告(2003年)はなんと言っているのか?

「現時点では、どんなミッション能力が『初期防衛運用(IDO)』以前に実証されるか定かではない。」

現在行われている弾道ミサイル防衛システムの「能力についての評価は、主として、モデリング、シミュレーション、それに、構成要素やサブシステムの開発実験、分析に基づくものであって、完成した統合的システムの全体的運用実験に基づくものでないと言うことを理解することが重要である。」

モデリングやシミュレーションで模倣しようとしている「システム自体が未完成であるため、BMDSのモデルやシミュレーションが妥当なものであるかどうか適切に判断することができない。」

「IDOの能力は、北朝鮮のICBMによる攻撃シナリオと符合する4つの交戦シークエンスについて、評価されることになる。」

「弾道ミサイル防衛システムの未完成な構成要素のため、システム・レベルでの実験は03年度の終わりまでの段階ではほとんど実施されていない。」

コイル報告が秘密文書に指定された経緯は?

下院政府改革委員会のヘンリー・ワックスマン、ジョン・ティアニー両民主党議員は、ラムズフェルド長官宛ての書簡(pdf, 2004年3月25日付け)で、次のように述べ、国防省の措置を避難している。
  
「ペンタゴンが実験責任者による50の具体的な勧告を秘密指定するという決定は極めてうさんくさい。秘密指定システムを使って公開の議論を妨害しようとする試みのように見える。」

 元々報告書が公開されたのはつぎのような経緯からだった。コイルが2000年9月8日の同委員会の安全保障・復員軍人問題・国際関係小委員会での証言でこの報告書に言及。国防省は、同委員会に対する報告書の公式提出要求を拒否しつつけたが、2001年5月31日、やっと提出。ただし、「フォー・オフィシャル・ユース・オンリー」と各ページに記し、また、「一般への公開を承認していない」との書簡を添えてのことだった。
 2001年6月12日 ティアニー議員から、ラムズフェルド長官に対し、なぜ公開を望まないのかのについて、細かい説明を求める書簡をだした。返事がないので、シェイ委員長が報告書を同月26日に公開。報告書は民間団体のホームページなどの載ることとなった。上のUCSの分析もこの報告書に依拠するところが大きい。

  ・国防省が、すでに公開されているものを秘密指定するのはこれが初めてではない。シオドア・ポストル(MIT教授)が、囮に対するミサイル防衛システムの脆弱性を「ミサイル防衛局(MDO)」自身のデータが示していることを指摘した書簡(原文)をホワイトハウス宛に送ったところ、この書簡が秘密指定にされてしまった。これも、書簡がインターネットを通じて世界中に広まった後のことだった。ポストルは、これ以前にも水爆について行った分析が秘密指定にされてしまった経験を持つ。

軍部は本気なのか?

行政管理予算局(OMB)は、その報告書(pdf)(DEPARTMENT OF DEFENSE PART ASSESSMENTSpp.127−137)の中で2005年中に配備をするシステムの翌年からの運用予算がないことを挙げて、軍部の各部局が本気なのかどうかについて疑問を呈している。国防省の中の「ミサイル防衛庁(MDA)」が開発したシステムを、陸軍、海軍がそれぞれ受け入れて運用することになる。ホワイトハウスと開発側は一生懸命でも受け入れ側が本気じゃないと言うことだろうか。

 「05年度を越えた運用・支援、そして、ブロック08配備(国防省の長距離ミサイル防衛ゴール)のための予算が組まれていない。」

 「運用・支援のための、そして、将来のブロックの配備のための長期的な予算が組まれていないため、すべてのパートナーが将来のゴールに完全にコミットしているかどうか判断しかねる。」

退役将官らはなんといっているか?

「大統領が、この高価で、実験をしていないGMDシステムの作戦配備を延期され、その代わりに、核兵器・物質を置いている多くの施設を守り、米国に大量破壊兵器を持ち込もうとする恐れのあるテロリストに対して、我が国の港や国境を守るためのプログラムに関連資金を移すことを提案します。」

 元統合参謀本部議長(1985−89年)のウイリアム・クロー大将を含む49人の退役将官グループの書簡(2004年3月26日)

ロシアはどう反応するだろうか?

モントレー研究所のサイトよりロシアの核態勢が最終的にどうなるかは定かでないが、ロシアは、今年2月18日に、軍事演習の一環として、軌道を変えられる新しい弾頭の実験を行ったと発表した。ミサイル防衛を無力にするためだという。
 参考:モントレー研究所CNSのページ 

NRDC(天然資源防護協議会)のハンス・クリステンセンらは、1968年に、モスクワを守る限定的な弾道ミサイル防衛システムの破壊を確実なものにする目的で、100発以上のミサイルで攻撃を仕掛ける計画を米国が立てていたことを最近明らかにした。今後の中国やロシアの対応を考える際のヒントになる。
ブリティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスト

イージス艦ミサイル防衛システム


イージス艦ミサイル防衛システムとは?

防空戦闘用に開発されたイージス艦から発射する三段式のミサイル(SM−3)にLEAP(軽量大気圏外飛翔体:もともとSDI用に開発。)と呼ばれる体当たり装置を載せて運び、大気圏外でこのLEAPが敵弾頭がSM3から分離し、装備されている赤外線探知装置で敵弾頭を見つけて体当たりで破壊するというもの。イージス艦のレーダー能力などを改善し、新規開発のSM−3ミサイルと組み合わせて使うというアイデア。海軍戦域大(NTW)システムと呼ばれていたもの。

LEAPは、現在、キネティック・ウォーヘッド(KW)と呼ばれている。運動エネルギー弾頭、つまりは体当たり装置。

SM3は、元々、2段階に分けて開発する計画で、日本が協力しているのは、第2段階の方。第一段階(ブロック1)は、使い物にならないから、途中で研究開発を中止して、第2段階(ブロック2)に移行するとの説明が一度議会でされた後、復活した。第一段階では秒速3kmを、第2段階では、秒速4.5kmを目指す。ただし、第2段階の方が最終的にどのようなものになるかは不明。日本が導入を決めたのは、第一段階の方。

米国のイージス艦ミサイル防衛システム配備計画は?

未済府防衛庁長官の説明と海軍長官の説明の間に差があるが、ひとまず今年の秋から、米国に飛んでくるかもしれない大陸間弾道弾の監視・追尾用として、イージス艦を1隻日本海に配備し、2005年から同種の船を増やすと同時に、短・中距離ミサイルの迎撃ミサイルSM3を装備したイージス艦の配備を始めるということのようである。

・ミサイル防衛長官ケイディッシュ長官の説明
  (pdf, 2004年3月11日上院軍事委員会及び3月25日下院軍事委員会証言)

 1)迎撃ミサイル装備艦配備計画 (短・中距離ミサイル用)
  2005年末までに以下を配備
   BMD能力を持ったイージス巡洋艦 3隻
   SM3ミサイル 最高10基 (上の3隻に搭載)
*以前の計画は同期で20基(次項参照)

 2)長距離監視・追尾能力装備船配備計画(地上配備のICBM迎撃システムの一環)
  2005年末までに以下を配備
   改良型SPYー1レーダー搭載イージス駆逐艦 10隻
  2006年末までに以下を配備
   改良型SPYー1レーダー搭載イージス駆逐艦  5隻

 合計 イージス駆逐艦15隻 + イージス巡洋艦3隻

・ゴードン・イングランド海軍長官説明(原文

 ミサイル防衛会議初日2004年3月22日での演説
  ミサイル防衛局MDAと「米国航空学・宇宙航空学協会(AIAA)」共催

 第1段階 2004年9月 
   誘導ミサイル駆逐艦日本海に配備
    長距離監視・追尾(LRS&T)用 GMD用

 第2段階 2005年から
   イージスBMD巡洋艦1隻に、SMー3ブロック1(第一段階)ミサイルを装備
    短・中距離の弾道ミサイルの脅威に対処

 第3段階 2006年春達成
   合計 10隻のDDG(駆逐艦)と1隻のCG(巡洋艦)

*ケイディッシュMDA長官の説明とイングランド海軍長官の説明を比べると、後者の方が配備が遅れる格好になっているが、その理由は不明。ケイディッシュ長官の説明は、イングランド長官の演説を挟んで2度行われているので、MDAの計画の変更というわけではないようだ。MITのジョージ・ルイスは、原水禁に宛てたメールで、「海軍の方が、現実的に言ってMDAの計画には無理があると判断をしているが、それをMDAに伝えていない」か、「イングランド長官の説明が間違っている」かの二つの可能性が考えられると説明している。

ブロック2004でのSM3の配備数を20から10に削減した理由は?

03年6月の実験でSM3に載せる「キルヴィーイクル(体当たり破壊装置)」の「ソリッド姿勢高度制御装置(SDACS)」に問題が判明したため。12月の実験では、単純化したバージョンを使用。今回の予算では、別の姿勢高度制御システムの開発用の予算が要求されている。

SM3の実験計画及びその問題点は?

これまで5回行われ、4回成功したということになっているが、実際の「脅威」を想定した現実的な実験とは言い難い。

イージス巡洋艦「エリー」から発射したSM3に搭載の「キネティック弾頭(KW=体当たり装置)」で、カウアイ島から発射された「標的」ミサイルを迎撃する方式。SM3が、実際に対処しなければならない「敵」ミサイルでは、弾頭が宇宙空間で分離されるが、実験では、弾頭が本体に着いたままの「標的」迎撃を試みているだけ。5回の実験のうち4回で使われた「標的」アリーズとノドンを比べるとつぎの通り。

アリーズ 

 射程700km 
 ロケット燃料が燃え尽きたときのスピード 約2.4km/秒
 長さ 10.5m以上
 最大直径 1.3m

ノドン

 射程1300km
 ロケット燃料が燃え尽きたのときのスピード 約3km/秒
 弾頭長さ2m (おそらく)
 弾頭直径 1m (おそらく)

これまでの迎撃実験は以下の通り  これからの実験は 

参考:北朝鮮の「ノドン」迎撃可能?
   非現実的な海上配備ミサイル防衛システム実験

PAC3(パトリオット能力発展型第3段階)


PAC3の配備計画は?

短距離ミサイル・巡航ミサイルを対象としたPACシステムは、「実用段階」に入っているということで、陸軍に主要管轄権が移っている。

  今回のイラク戦争で、イラク側が使ったのは、射程150−200km程度のミサイル。湾岸戦争の際にPAC2で打ち落とし損ねたのは、射程約600キロ程度のスカッド。北朝鮮のノドンの射程は、約1300km。

2004年末までに陸軍が合計238基を受け取る計画(2002年12月2日発表:ACA)
 (2002年末までに配備用として53基受け取った。
  2005年度予算では、108基調達予定)

  2004年2月に、ロッキードマーティンと159基の製造契約(2006年4月が納入期限。22基は、イラクでの戦争で使われた分の補給用)

参考:PAC3関連データ
グローバルセキュリティーのページ写真もある。

PAC3の実験計画は?

開発迎撃実験
10件中9件成功(ミサイルの迎撃は、6件中5件成功。)

運用実験 結果

当初計画では、これらの実験の実験に基づき、2002年9月には少数生産計画の決定ができると期待されていた。最後の実験の失敗のあと、実験結果が悪すぎるので、国防省は、少数生産計画の決定を少なくとも1年は延期と発表。

ところが、2002年10月31日、「ミサイル防衛庁(MDA)」のケイディッシュ長官は、PAC3は、「有用な軍事システム」だとし、「予算の余裕のある限りできるだけ早く」購入することを提言した。

今後の実験計画は?
 クリスティー報告2003年によると:

日本のBMD計画


日米協力の進み具合は?

ケイディッシュ長官(3月11日証言)
「2003年12月、日本は、正式の閣議決定によって、多層BMDシステムの取得に向かう最初の同盟国となった−−最初の能力は、イージス駆逐艦の改修とSM3ミサイルの取得を基礎とするものである。さらに、日本は、そのパトリオットを、PAC3ミサイルと改良型の地上支援機器によって改善する。われわれは、1999年以来日本と密接に協力して、SM3ミサイルの改良型構成要素を設計・開発する作業を行ってきた。このプロジェクトの結果として、一つあるいはそれ以上の要素を組み入れた飛翔実験を2005年と2006年に行う。これらの決定は、緊密な同盟国との間の重要な前進を意味するもので、これらの重要な事業において協力することを楽しみにしている。」

日本の弾道ミサイル配備計画は?

日本政府は、2003年12月19日、安全保障会議と閣議で、2004年度からミサイル防衛(MD)システムを導入することを正式に決定。

予算

日本は、米国との間で、イージス弾道ミサイル防衛システム(海軍戦域大(NTW)システムと呼ばれていたもの)の共同技術研究を1999年から実施している。

日米共同研究の経緯:

1994年
 
 9月9日
TMD構想の有用性を検討するための日米共同研究開始で合意
1998年
 
 6月4日
防衛庁は、翌年から技術研究段階へ移行する方針を固める
 8月16日
共同技術研究のため99年度防衛予算で10億円前後を要求する方針を固める
 8月31日
北朝鮮テポドン1ミサイル実験
 9月20日
日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、日米共同技術研究を99年度から開始するとの合意に達する
 12月25日
安全保障会議の了承を得て、共同技術研究を99年度から開始することが閣議決定される
1999年
 
 8月16日
日米両政府、NTWの共同技術研究に関する交換公文とその細目を決めた了解覚書を交わす。

  ・日本は、イージス艦を4隻保有している。米国以外でイージス艦を持っているのは日本とスペインだけである。

 共同技術研究の対象となっているのはつぎの四つの分野: 

参考:


MDA写真館