核兵器
2004.1.13

非現実的な海上配備ミサイル防衛システム実験

米国ミサイル防衛庁は、昨年12月11日にハワイ沖で行ったイージス艦搭載SM(スタンダード・ミサイル)−3を使った迎撃テストについて、これまでより複雑で実際的な実験であり、「イージス艦の迎撃能力がミサイル防衛全体で機能することが、十分実証された」と主張しています。(共同通信記事−yahoo米国ミサイル防衛庁発表
 これは日本が導入を計画しているシステムの実験です。「憂慮する科学者同盟(UCS)」や「防衛情報センター(CDI)の専門家らは、実験は、現実的な状況とはほど遠い設定で行われていると論じています。イージス艦発射システムの4回目の成功とされている実験の中身についてのこれらの論評を訳出しました。(参考:日本のミサイル防衛


ミサイル防衛に関して、ペンタゴンは、馬の前に馬車を置き続けている。
イージス艦弾道ミサイル防衛テストは計画されている配備を正当化するものではない

原文 

デイビッド・ライト
UCS世界安全保障プログラム共同ディレクター

 昨日行われたイージス艦弾道弾防衛システムをよく見ると、この実験は、このシリーズのこれまでのものと同じく、重要な点で、不自然なものであることが分かる。この実験は、イージス艦防衛システムが実際の攻撃の際に弾道弾を迎撃する能力について何も語っていない。

 この実験は、これまでのものと同様、実際の攻撃の際に予想されるのよりもずっと大きなターゲットを使っている。実験に使われた模擬弾頭は、ターゲットのミサイルの本体についたままだった。想定された射程のミサイルによる実際の攻撃の場合には、弾頭はミサイル本体から分離することが予測されるにも関わらずである。要するに、レーダーに補足される大きなビーコン(標識)としての役割を果たすミサイルの本体が弾頭に付着した状態だったということである。ミサイル本体が、大きなレーダー反射体となり、ミサイル防衛レーダー(イージス艦のSPYレーダー)によるターゲットの追尾をずっと容易にしたのである。これは、非常に重要な点である。なぜなら、SPYレーダーは、元々、航空機を監視するために開発されたもので、ミサイル防衛に必要とされる距離で、ミサイルの弾頭を監視・追尾するのは難しいと考えられるからである。

 さらに、キル・ビーイクル(体当たり破壊装置)は、その機動能力の一部しか使わないかたちで作動した。これは、キル・ビーイクルの「姿勢高度制御装置(DACS)」の開発上の問題を示唆するものであるかもしれない。しかし、機動性の劣るキル・ビーイクルを使ったにも関わらず実験が成功したと言うことは、キル・ビーイクルが、実際のミサイル攻撃の際に利用できるよりも多くの情報をターゲットの位置について与えられていたことを示唆している。

 現在の計画では、イージス防衛システムは、現実的なターゲットに対する実験を行わないまま配備が始まることになっている。ペンタゴンは、ミサイル本体から分離する模擬弾頭の実験を2005年後半まで行わない計画である(*注)。このシステムの配備が計画されている2005年半ばより後のことである。今回のような不自然な実験は、実験計画のこのような初期の段階では適切であるかもしれないが、配備の適切な基礎とはならない。なぜなら、現実の世界でシステムが持つ能力について基本的に何も語らないからである。

 注: UCSが得た情報によると、この初めての分離実験は、以前は、次回の実験FM(フライト・ミッション)7で行うはずであったが、FM8で行うことになったという。


イージス弾道ミサイル防衛飛翔テスト

「防衛情報センター(CDI)」より

原文(pdf) 

2003年12月11日実験:FM(フライト・ミッション)−6

 FM−6は、ブロック2004システム[2004年頃配備計画システムと言う意味]の「ソリッド姿勢高度制御装置(SDACS)」と、上昇段階シナリオにおいて破壊目標ポイント移動を達成する能力を実証するために計画された。迎撃は実際に達成されたが、SDACSは、それが実際に配備されるのとは異なるモードで実験された。ミサイル防衛庁は、この飛翔実験は、SM−3の「より複雑かつ困難で、現実的な弾道ミサイル迎撃シナリオ」の一環だと主張している。しかし、FM−6は、FM−5を修正して難度を落とした実験である。
 FM−5は、2003年6月に実施され失敗に終わっている。(参考:日本のミサイル防衛)FM−5の問題は、この実験で初めて使われたSDACSであったことが判明した。SDACSは、パルス・モードで使われていたが、おそらくそのため部品にひび割れが生じ、これが誤作動をもたらし、迎撃失敗につながったのだろう。FM−6では、この新しいSDACSが使われたが、持続モードにおかれ、追加的なパルスは使われなかった。(実際の現場では、そういう作動の仕方をするようには設計されていない。)FM−6では、カウアイ島近くのレイク・エリーから発射されたスタンダード・ミサイル(SM)−3迎撃体がターゲットのアリーズを、高度137km、速度3.7km/秒で迎撃した。