日豪両政府のイニシャチブによる「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の広島会合が10月18日から開催されるのに会わせ、17日に「ICNNDと市民社会の対話」を実施し、原爆ドーム前では"NUCLEAR FREE NOW"キャンドル・ナイトを繰り広げました。18日には300人が参加して「核兵器のない世界へ─今こそ飛躍を!」と題する国際市民シンポジウムを広島の世界平和記念聖堂で開催、ICNND、日本政府などに対する決議を採択しました。
広島会合の直前には、長崎を訪れた川口共同議長が先制不使用宣言の意味を否定するような発言をするなど、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)」に対する市民社会の期待を裏切る事実が明らかにされました。
なかでも、米国が「核態勢の見直し(NPR)」で今後数年間の核政策を定めようとしている時期に、核の役割を核攻撃の抑止にのみ限定する、実質的な核先制不使用への動きを止めようとする勢力に加担する発言は、核廃絶への新しい潮流に逆行する、許し難いものです。
当初、ワシントン会合などで積極的に先制不使用宣言を求めていたICNNDが、姿勢を後退させた背後には、日本の現・旧外務官僚の活躍がありました。諮問委員に、先制不使用に強硬に反対してきた佐藤行雄元国連大使、阿部信泰国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長を入れているのは、歴代自民党政権が保持してきた、核の傘を核以外の軍事力に対しても求める立場を踏襲するものです。また、現役の外務官僚は、ほとんど廃棄の決まっていた核搭載トマホークミサイルの復活配備を同盟国として米国に要求し、その成果を上げようとしています。これは、戦術核の削減・廃棄を訴えた東京フォーラム報告書(1997)にも反する行動です。
もう一人のICNND共同議長、エバンズ元豪外相でさえ、前回5月の来日時に、「(日本が)核廃絶を唱える一方で核兵器が大好きだと言っていたのでは、世界からまともに相手にしてもらえない。核兵器以外の兵器──生物・化学兵器、それに通常兵器 ──による攻撃に対しても核兵器で守って欲しいと米国に望む政策をとりながら、核廃絶を唱えるというのは根本的に矛盾している。」と指摘するほどです。
一方、岡田外相が核の先制不使用について発言する、また核兵器廃絶を訴えたオバマ米国大統領がノーベル平和賞を受賞するなど、今後に期待の持てる面もあります。17日の「ICNNDと市民社会の対話」では、多くの委員が、ヒバクシャをはじめとする市民の核廃絶への思いに共感を表明しました。委員会のスケジュールに入っていなかった、キャンドル・ナイトにエバンズ共同議長をはじめとする委員が急遽参加し、核廃絶への心情をうったえるなど、感動的なシーンも見られました。
今後、委員会はオーストラリアと日本の首相に報告、世界情勢の変化を踏まえて年明けに報告書を発表する予定ですから、まだ多少の修正の可能性はありますが、20日に発表された概要は、落胆せざるを得ないものです。報告書の内容が日本外交旧来の核の傘依存政策を是認するようなものであれば、新政権はこれに左右される事なく、核兵器のない世界への実質的な政策を進めることが期待されます。
300人が参加した18日の国際市民シンポジウムでは、日本政府などに対する下記の決議をあげました。
核兵器のない世界へ--今こそ飛躍を!
ICNND広島会合国際市民シンポジウム
決議2009年10月18日
今こそ、この世界から核兵器を完全になくすことを決定し、実行に移すべきときである。
「核兵器のない世界」をつくろうという国際的な機運が高まっている。今これをつかまなければ、この機運は消えてしまうかもしれない。2010年5月にニューヨーク国連本部で開催される核不拡散条約(NPT)再検討会議において、核兵器を廃絶するための具体的な措置がとられなければならない。
このような歴史的な機会のなかで、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)の第4回会合が広島で開催されるにあたり、私たちはこの場に集まった。被爆者をはじめここに集まった人たちの共通の意思として、国際社会、ICNND、日本政府そして日本の市民社会に対して、以下の通り強く訴える。
国際社会に対して
- 広島・長崎に投下された原爆被害の実相は、核兵器が廃絶されない限り人類に未来はないということを明白に物語っている。それにもかかわらず核保有国は、この目標を実行に移すという自らの過去の約束および法的義務を果たしていない。核保有国は、誠実な核軍縮交渉を行っていない。核保有国および非核保有国は、1995年と2000年のNPT再検討会議で行った約束を実行しなければならない。そして、NPT加盟国と非加盟国を含むすべての国は、核兵器を包括的に非合法化する核兵器禁止条約の交渉をただちに開始すべきである。
- 国際社会は、人間、国家そして国際の安全保障が、核兵器や他の大量破壊兵器をはじめとする軍事力に依存しないで保たれるように、平和で公正であり環境的に持続可能な世界をつくるための努力をしなければならない。
- 原子力の民生利用によってもたらされる核拡散の問題について、率直にその危険性を認めつつ、現在の問題を悪化させずかつ新たな問題をつくり出さないような形で対処しなければならない。
ICNNDに対して
- 米オバマ政権の登場によって生み出された「核兵器のない世界」への機運を強めるために、ICNNDは、この流れをさらに加速させるような勧告を行うべきである。ICNNDの勧告は、状況を牽引するものであるべきであり、今ある流れに乗り遅れるようなものであってはならない。
- ICNNDは、広島・長崎への原爆投下の破滅的な結果と、被爆者たちの願いを心に留めつつ、2020年までに核兵器禁止条約を発効させるための道を指し示すべきである。
- ICNNDは、今後4年間の短期目標の一つとして、核兵器禁止条約の交渉開始を強く勧告するべきである。
- ICNNDはまた、国連安全保障理事会が、核兵器の使用は人道に対する罪であると認定するよう勧告すべきである。そして、消極的安全保証のとりきめを持つ非核地帯が拡大することを勧告すべきである。
- とりわけICNNDは、核兵器の「先制不使用」の原則への支持を明確に打ち出すべきである。そして、すべての核保有国が先制不使用の政策をただちに、遅くとも2010年のNPT再検討会議までに採択するよう勧告すべきである。
- ICNNDは、発足以来、ICNND日本NGO・市民連絡会からの2つの公開書簡を含むNGOからの意見表明を受けてきた。これらの文書に記された勧告はいずれも重要である。ICNNDは、市民社会から提出された意見表明について真剣に検討し、それらの意見や勧告を報告書に盛り込むべきである。
日本政府に対して(2009年10月15日付「核兵器廃絶への真のリーダーシップを求める要請」の要点)
- 日本政府は、核の「先制不使用」政策への支持を公式に宣言し、米国に対しても核の「先制不使用」政策を採択するよう求めるべきである。
- 国連総会およびNPT再検討会議において、日本政府は潘基文国連事務総長の核軍縮提案および核兵器禁止条約の交渉開始への支持を表明すべきである。
- 日本政府は、北東アジア非核地帯をめざすという政治宣言を発し、六者協議などの場を通じてこの目標の実現に向けて行動すべきである。政府はそのための交渉を行い、平和憲法の理念をいかして、核兵器に依存しない安全保障政策へと移行すべきである。
- 日本政府は、東アジアおよび北東アジアの緊張緩和の障害となっているミサイル防衛計画をただちに見直すべきである。
- プルトニウムおよび高濃縮ウランの利用は、核拡散の危険をもたらす。日本が真に核不拡散に貢献するためには、日本政府は核燃料サイクル政策を見直すべきである。
日本の市民社会に対して
- 被爆者の証言を聞き、そのメッセージを学校や地域で広めていこう。そうした活動の中で、必ず現在の核兵器問題と核兵器廃絶の必要性についても触れるべきである。
- 今が核軍縮を前進させるかつてない歴史的好機であるということを、地域において、人々に語り、意識を高めていこう。
- 平和市長会議や日本非核宣言自治体協議会にまだ加盟していない地方自治体や、ヒロシマ・ナガサキ議定書にまだ署名していない市長に対して、これらに加盟また署名することを呼びかけていこう。
- 今年から来年にかけて、非核宣言を行っている地方自治体においては、必ず市民が参加する行事を行うようにさせていこう。
- 自分たちの地域から選出された国会議員に対して、核兵器廃絶のために活動するよう働きかけていこう。
- 核廃絶のための市民社会の協力を全世界規模で広げていこう。そのことによって国際社会を動かすことができる。
- 2010年5月のNPT再検討会議に向けて、核廃絶のための力強い運動をつくりあげていこう。