核兵器
2003.5.23〜

地中貫通型核兵器・小型核・核実験準備態勢基礎情報

  「国防省の制服組で、[地中貫通型核兵器の]新しい必要性について、笑わずに語れるものがいたら、コーヒーをおごってやる」 「むちゃくちゃだ。ばかげている。」核兵器研究所の「雇用を維持する試みだ」
    ── B・ピューリフォイ  
核兵器のケース部分、電子機器などの開発に責任を持つサンディア国立研究所元副所長
(4月23日付け マーキュリー・ニューズ紙より)

 5月21日、米国上院は、5キロトン未満の低威力の核兵器の製造に至りうる可能性のある研究・開発を禁止する条項を廃止することを決定しました。しかし、同時に次のふたつの条件が付きました。1)研究段階を越える低威力核兵器の開発作業を禁止。2)開発エンジニアリング段階に移るには、議会の許可を得なければならない。
 下院も5月22日似たような法案を通過させました。
 これが何を意味するのか、理解と運動の助けになるよう、国防予算に登場する低威力の核兵器、地中貫通型核兵器、核実験の準備期間短縮などの問題について整理しました。


目次

  1. 国防歳出権限法案で焦点になっている核開発議論とは?
  2. 地中貫通型は低威力か?
  3. 上の三つの焦点の最近の流れは?
  4. 下院軍事委員会を通過した低威力核兵器研究・開発禁止に関する妥協案とは
  5. 核兵器の開発段階とは?
  6. 5月21日に上院を通過した案は?
  7. 2004年度予算案提出に当たって政府が地中貫通型核兵器研究について行った説明?
  8. 地中貫通型核兵器とは?
  9. 地中深く潜らせたい理由は?
  10. 無害な地中貫通型核兵器はできるか?
  11. 地中貫通型核兵器のアイデアがうまく行かないのは?
  12. 貫通能力と破壊力のデータは?
  13. 1キロトンの地中貫通型爆弾で予想される死者数は?
  14. 米国は低威力の核兵器を持っていないのか?
  15. 米国は地中貫通型核兵器を持っていないのか?
  16. B61−11の技術的問題点は?
  17. B61−11以前には地中貫通型はなかったのか?
  18. スプラット議員が1993年に低威力核兵器研究・開発禁止条項を提案したのは?
  19. 今地中貫通型核兵器を開発することの国際政治的意味合いは?
  20. 政府はなぜ低威力核兵器研究・開発禁止条項の廃止が必要と言っているか?

 資料編 

  1. 2001年12月末の「核態勢の見直し(NPR)」
  2. 核実験再開・新型核兵器開発に関する内部文書
  1. リード報告(統合戦略ターゲット計画スタッフ招集による「戦略抑止研究グループ」の報告書)
  2. 「十分な武装をした暴君に対処:小型核兵器のささやかな提案」
  3. 『二一世紀における核兵器』2000年6月
  4. 『白書−−二一世紀の核兵器政策を求めて』(2001年3月)
  5. 『米国核戦力及び軍備管理の原理と要件』(2001年1月)
  6. 国家公共政策研究所(NIPP)の最近の論文
  7. フォスター・パネル(「米国保有核の信頼性・安全性・ 保安状態を評価するパネル」
  8. 「堅固な地中深く埋められたターゲット(HDBT)の破壊に関する議会への報告
  9. 「差別化と防衛−−核兵器プログラムのアジェンダ」
  1. 「低威力地中貫通型核兵器」
  2. 「低威力地中貫通型兵器」
  3. 「ファイヤー・イン・ザ・ホール」
  4. 「地中に埋められた生物兵器用生物体ターゲットに対する核兵器の効果」
  5. 「戦略的選択:新型バンカー・バスターと核拡散防止」
  6. 「地中貫通型兵器」
  7. 「バンカーバスター核兵器の抱える科学的問題」
  1. 「ブッシュの核態勢見直しの最初の予算」
  2. 「2004会計年度予算の核兵器関連活動要求」
  1. 「米国の新世代の核兵器概論」
  2. 「バンカー・バスターズ:新型核兵器を目指すワシントンの動き」
  3. 軍備管理協会(ACA)のファクトシート



国防歳出権限法案で焦点になっている核開発議論とは?

 焦点となっているのは次の三つ

1)低威力の核兵器の開発禁止条項廃止
  1994会計年度米国国防歳出権限法にある5キロトン(広島の3分の1)未満の核兵器の開発禁止の条項を廃棄しようとするもの。この禁止条項は、提案議員の名前をとってスプラット・ファース条項と呼ばれる。禁止条項廃止案は現時点での具体的な研究のための資金を要求するものではない。

2)「堅固な地中貫通型核兵器(RNEP)」(バンカーバスター)
 RNEPのフィージビリティー・スタディー。2003年度予算で、年間約1500万ドルの3年計画を開始することが決まった。2003年度が1550万ドル。2004年度(2003年10月から)要求は1500万ドル。

3)核実験の準備期間の短縮
 米国は1992年9月23日にネバダで最後の核実験を行って以来、核実験をしていない。
 現在は、核実験の決定があってから2−3年で核実験が行える態勢を維持する計画。これを18ヶ月で行える態勢にしよういうもの。18ヶ月の態勢に移行するのに3年かかるとエネルギー省は言う。
 2003年度予算は、1500万ドル。2004年度要求は、約2500万ドル。
 

地中貫通型は低威力か?

とはかぎらない。
低威力の地中貫通型核兵器も、高威力の地中貫通型核兵器もありうる。
「堅固な地中貫通型核兵器(RNEP)」は数百キロトンレベルとされている。
 

上の三つの焦点の最近の流れは?

1)低威力の核兵器の開発禁止条項
2001会計年度国防歳出権限法に、この禁止条項の破棄を盛り込む案をジョン・ウォーナー、ウエイン・アラード両共和党上院議員が提出したが、これは、最終的には、地中貫通型核兵器の必要性についての研究を政府に義務づけるものとなった。

昨年は、2003会計年度予算の審議で、低威力核兵器の研究・設計は許すが、製造は認めないと言う法案が下院を通過。上院は、スプラット・ファース条項を維持。最終的に、スプラット・ファース条項が維持される。

2)「堅固な地中貫通型核兵器(RNEP)」(バンカーバスター)

政府は、2001年会計年度国防歳出権限法で提出を義務づけられた報告書(2001年7月付け)を2001年10月に議会に提出。今のところRNEPが必要との結論に達していないとの内容。

2003年会計年度国防歳出権限法は、地中貫通型核兵器のフィージビリティー・スタディーを3年計画で行うことを決定。年間約1500万ドルの予算。

ただし、次のような制限を設けていて、予算が使えるようになったのは2003年4月。

a)国防長官が、両院の軍事委員会にb)の内容の報告書を提出し、提出から30日経過するまで、エネルギー省長官にこの計画目的の資金は提供されない。

b)
 1.RNEPの軍事的必要性
 2.RNEPに関する核兵器利用政策
 3.RNEPの対象となるターゲットの範疇・タイプについての詳細な描写
 4. 3.に描写されたのと同じ範疇・タイプのターゲットを破壊する上での通常兵器の能力の評価

この秘密報告書が議会に出されたのが2003年3月19日。
それから30日経過した4月20日の週に予算が執行。

2003年会計年度国防歳出権限法は、また、全米科学アカデミーに地中貫通型核兵器の使用の影響についての研究を委託することを定めている。同法制定から180日以内に議会に報告となっているが、研究は、まだ始まったばかり。来春まで完成しないと見られている。

エネルギー省は、2002年3月14日の上院軍事委員会で、B61(ロスアラモス国立研究所設計)とB83(ローレンスリバモア国立研究所)の二つの核爆弾の修正について検討すると説明。低威力は目指さないとしている。両方とも威力の調節のできるもので、上限は、B61は、350キロトン、B83はメガトンレベル。

3)核実験の準備期間の短縮

1999会計年度予算で「米国保有核の信頼性・安全性・保安状態を評価するパネル」を3年間の計画で設立。(委員長は、ローレンスリバモア国立研究所のジョン・フォスター元所長)。このフォスター・パネルの2001年2月1日の報告書は、実験の準備期間についてつぎのように述べている。現在の2〜3年の「準備期間を、大統領が実験実施の決定を行ってから3〜4ヶ月にまで短縮する様々なオプションをエネルギー省国家核安全保障局(NNSA)は検討すべきだというのがパネルの見解である。」2002年3月15日の第3次報告は、「実験のタイプにより、3ヶ月から1年の実験準備態勢」とすることを全員一致で提案。

同パネルは、2003年会計年度予算で、1年延長が決まった。
 
2003会計年度国防歳出権限法は、核実験の準備態勢を6カ月、12カ月、18カ月、24カ月とした場合のそれぞれのコストについて評価し、最適期間について議会に報告するよう定めている。この報告は、2004年度予算案とともに提出することが義務づけられているが、まだ出されていない。このため、2004年度要求の準備態勢強化用予算約2500万ドルのうち60%を凍結した形での予算案通過となった。

2004会計年度予算案では、「国防省とエネルギー省国家核安全保障局(NNSA)は、最適の態勢について検討を進める間、18ヶ月の実験準備態勢への移行に合意した。」と述べている。

 

下院軍事委員会を通過した低威力核兵器研究・開発禁止に関する妥協案とは?

昨年も、全面的な廃止を避けるために、同様の妥協案を、1993年の条項の提出者の一人スプラット議員が提出した。どの段階までの作業を許すかという議論。

スプラット議員は、昨年、下院を通過した妥協案について次のように述べている。

妥協案は、「低威力の核兵器に関して我が国の研究所が行える研究のタイプを広げる。・・・研究所は、概念規定作業ができる。研究作業ができる。木製の模型が作れる。しかし、金属を曲げたり、核分裂性物質の部品部分を扱ったりすることはできない。」

 

核兵器の開発段階とは?

核兵器の研究開発は次のような段階で行われる。

新型核兵器
1 概念開発
2 プログラム・フィージビリティー・スタディー
2A 設計定義およびコスト研究
3 開発エンジニアリング
4 製造エンジニアリング
5 最初の製造
6 量産・貯蔵
7 退役/保管

既存の核兵器の修正
6.0 量産・貯蔵(改修プロジェクト前および後の貯蔵状態)
6.1 概念評価
6.2 フィージビリティー・スタディーおよびオプションの選択
6.2A 設計定義およびコスト研究
6.3 開発エンジニアリング
6.4 製造エンジニアリング
6.5 最初の製造
6.6 本格製造

妥協案がなくても、1,2(6.1,6.2)までは認められるとの解釈があった。2A(6.2A)が争点となっていた。

(エネルギー省の2003年度予算要求関連文書は、「堅固な地中貫通型核兵器」の第6.2及び6.2A段階の研究がこの予算に入っていると述べている)

 

5月21日に上院を通過した案は?

スプラット・ファース条項を廃止したが、次の二つの条件がついている。
1)研究段階を越える低威力核兵器の開発作業を禁止。
2)開発エンジニアリング段階に移るには、議会の許可を得なければならない。

これは、下院軍事委員会での決定を経て、5月22日に下院を通過した案と内容的にほとんど同じだが、上下両院協議会でもめる可能性もある。

これまででも2A(6A)までは認められていたとの見解があり、実質的には、今回の措置であまり変化はないとするNGOのアナリストたちもいる。

具体的な研究用の予算はまだ要求されていない。
 

2004年度予算案提出に当たって政府が地中貫通型核兵器研究について行った説明は?

「国防省は、地中貫通型核兵器(RNEP)についての報告書を[2003年]3月19日に議会に提出した。この報告書の提出は、2003会計年度ボブ・スタンプ国防歳出権限法に定められている。この研究は、既存のストックにある二つの核弾頭──B61とB83──のケースの修正その他の作業を施し、兵器を堅固にすることによって、さまざまな地質を貫通してから爆発するようにできるかどうかを検討するものである。これは、堅固な地下深く埋設された[敵の]ターゲットを危険にさらす上での我が国の能力を高めるためのものである。RNEPフィージビリティーおよびコスト研究は現在のところ2006年に完結する予定である。しかし、我々は、研究期間を短縮する可能性を検討している。他の先端的概念については、国防省と協力して、変化しつつある軍事的必要性について検討する。我々は、理論的・工学的設計作業を行う。現時点では、新しい兵器を実際に開発する必要性は認定されていないと言うことを強調しておかなければならない。」

エネルギー省国家核安全保障局長官代行リントン・ブルックス
 

地中貫通型核兵器とは?

地中深くに設けられた司令部、生物・化学兵器施設などを攻撃するための核兵器。
爆弾のケースを堅固で、細長く、先のとがったものにすると同時に、おもりを入れて、落下の衝撃で地中深く潜らせようというもの。
 

地中深く潜らせたい理由は?

1)地中に潜ってから爆発させると、その「地震波」で地下の施設を破壊しやすくなる。 たとえば10キロトンのものを1メートル潜らせると、地上で爆発する200キロトンの爆発と同じ効果を持つ。5メートル潜ると、320キロトンの効果。

2)地下深いところにある生物・化学兵器施設に到達し、そこ爆発して、毒物を破壊し、なおかつ毒物も放射能も地下深くにとどまるようにするというアイデア。
 

無害な地中貫通型核兵器はできるか?

「いかなる発射体も、核爆発を閉じこめられるほど地中深く潜ることはできない。広島に投下された15キロトンの核爆弾の1%の威力のものでも閉じこめることはできない。」
ロバート・ネルソン
プリンストン大学科学・地球安全保障プログラム理論物理学者

 (注)広島に投下された原爆の威力の推定値の変更

日米合同で組織された原爆放射線評価検討会が2003年3月15日に承認した「DS 02」は、従来の「DS86」の推定値15キロトンを、16キロトンに変更した。

中国新聞2003年3月16日 「放射線量の新推定方式を承認 日米検討会 」

 

地中貫通型核兵器のアイデアがうまく行かないのは?

地下の浅いところでの核爆発は、放射能をばらまくのに「最善の」方法。
広島・長崎に投下された原爆が5−600メートルの上空で爆発したのは、20キロトン程度の爆発で破壊効果を最大にするため。核分裂でできた放射能は、そのまま上昇して遠くに運ばれた。爆心近くの放射能は、核爆発で発生した中性子の照射を受けた地上の物質が放射化したことによるもの。地下の浅いところで核爆発がおきると周りに核分裂生成物がばらまかれる。

放射能に加えて、化学・生物兵器の貯蔵所・工場をねらった場合、生物体・化学剤のばらまき装置ともなる可能性がある。化学・生物兵器の無害化には成功しそうにないと、核兵器の設計に当たってきた科学者リチャード・ガーウィンや、元ローレンスリバモア国立研究所研究所所長マイケル・メイは言う。

 

貫通能力と破壊力のデータは?

ロバート・ネルソン(プリンストン大学科学・地球安全保障プログラム理論物理学者)
は次のように説明する。

1キロトンでは、爆発のポイントから30メートル以上のコンクリートで守られた施設は破壊できない。

100メール以上のコンクリート(あるいはそれに相当する岩盤)の下に埋設された施設を破壊するには、100キロトン以上の核兵器が必要となる。

最も硬い鋼鉄できた発射体(ミサイル・爆弾)でも、長さが3メートルのもので、鉄筋コンクリートを約12メートル以上貫通することができない。(物理的限度が、長さの10倍。現実的には長さの4倍程度が限界。)

この程度の深さで核爆発があると、大きなクレーターができて大量の放射能が近くに降下する。

「低威力地中貫通型兵器」『科学と地球安全保障』誌2002年10号 (*)

 

1キロトンの地中貫通型爆弾で予想される死者数は?

死傷者数についてネルソンが行った計算を米国科学者連合のマイケル・レビが次のように要約している。

・1キロトンでも都市の人口密集地の地下の浅いところで爆発すれば、数万人の死者がである。
・郊外での場合でも、1キロトンの地中貫通型核爆弾が、地下5メートルのところで爆発し、そのときの風速が16キロメートル/時だったと想定(花崗岩の下約20メートルの施設を破壊できる)すると:
  風下3キロメートルまでの地域では、避難しなければ全員致死量の被曝。
  風下5キロメートルまでの地域では、避難しなければ50%が致死量の被曝。
  風下8キロメートルまでの地域では、一部の住民が急性放射線死。

「ファイヤー・イン・ザ・ホール」
 

米国は低威力の核兵器を持っていないのか?

持っている。
5キロトンあるいはそれ以下に威力の大きさを「ダイヤル調節」できる巡航ミサイル用や戦術核爆弾用の弾頭が多数ある。
 2002年保有数(配備数とは異なる)
戦術核爆弾用
     保有数  威力
B61-3   520   0.3, 1.5, 60, 170ktに調節可
B61-4   680   0.3, 1.5, 10, 40ktに調節可
B61-10   205  0.3, 5, 10, 80kt に調節可

巡航ミサイル用
W80    2120   5ktと150ktに調節可


参考:
戦略核爆弾用
B83    620   ktレベル─メガトンレベル
B61-7   470   4つの威力に調節可 最高350kt
B61-11   55   NPRによると単一威力

出典:
 ハンス・クリステンセン私信及び、
http://www.thebulletin.org/issues/nukenotes/jf03nukenote.html
http://www.nrdc.org/nuclear/nudb/datab12.asp

 

米国は地中貫通型核兵器を持っていないのか?

持っている。
B61ー11と呼ばれる核爆弾で1997年に約50発ほど配備。
B61−7のケースを変えて地下に潜りやすくしたもの。
主として、B53という9メガトンの核爆弾が古くなったので、それに代えるために開発。元々、少しでも地下に潜れば破壊力が増すという発想で、放射能の影響を減らすと言う考えのものではない。

 

B61−11の技術的問題点は?

ツンドラでの実験では、2−3メートルしか潜っていない。
コンクリートでは、6メートルほどが限度。
このB61のシリーズは威力を調整できるはずだが、NPRは、B61─11は、高い威力しか持っておらず、もっと貫通能力が高く、威力は低く抑えられるものを開発すべきだという。
「B61−11は土壌用。岩盤に耐えることはできない。」
フレッド・クレック国防次官補(マーキュリー・ニューズ4/23/03)

 

B61−11以前には地中貫通型はなかったのか?

1950年代にあった。

Mark8  25kt ウランを使ったガンタイプ 1952−57年配備 対象:地下施設、シェルター内の潜水艦など

Mark11  Mark8の改良型

(1970年代にパーシング2用に開発された地中貫通型W86は1980年にキャンセル)

http://www.thebulletin.org/issues/nukenotes/jf03nukenote.html
 

スプラット議員が1993年に低威力核兵器研究・開発禁止条項を提案したのは?

「低威力の核兵器の追求は、核兵器の使用の敷居を下げると心配したからだ。」
 ──スプラット議員
Stopping a Dangerous Drift in U.S. Arms Control Policy

(冷戦の終焉と湾岸戦争を経た状況の中で、第三世界の「敵」に対して使いやすい核(地中貫通型を含む)の開発を提唱する今日と同様の議論がでていた。)

 

今地中貫通型核兵器を開発することの国際政治的意味合いは?

より「使用可能」にするべく、また、核兵器の関係していない紛争状態において使うことを明示的な目的として設計され」ており、核使用の敷居を下げ、NPT体制の弱体化につながる。

憂慮する科学者同盟(UCS)のデイビッド・ライトとL・グロンランド
D. Wright and L. Gronlund, "Earth-penetrating Weapons" (Union of Concerned Scientists)

 

政府はなぜ低威力核兵器研究・開発禁止条項の廃止が必要と言っているか?

2004会計年年度国防歳出権限法案では次のような理由を挙げている。

・この条項は低威力の地中貫通型核兵器の開発の妨げになる。
・この条項は、単に、新しい、低威力の弾頭の研究を禁止しているだけはなく、このような弾頭の「米国による生産に至る可能性のある」あらゆる活動を禁止しており、以下のような努力の妨げにもなる。

1)次世代の核兵器科学者やエンジニアを訓練すること。
2)国際的安全保障環境における変化や所有核兵器の予測外の技術的問題に、迅速に断固として、対応することのできるような核兵器事業を再生すること。
 

資料編

政策

2001年12月末の「核態勢の見直し(NPR)」

http://www.globalsecurity.org/wmd/library/policy/dod/npr.htm

核兵器の開発の必要については、NPRはつぎのように述べる。「核兵器は、非核兵器の攻撃に耐えることのできるターゲットに対して使うことができる。(たとえば、地下深くのバンカーや生物兵器施設。)」このような「堅固な地中深く埋められたターゲット(HDBT)」の攻撃用としては、現在、限定的な地中貫通能力をもつB61−11(一九九七年に配備)しかないとしている。(そして、B61のシリーズは威力を調整できるはずだが、このB61−11は、単一の威力しか持っておらず、もっと貫通能力が高く、威力は低く抑えられるものを開発すべきだと述べる。エネルギー省と国防省の共同計画の第六・二及び六・二A段階の研究が四月に始められ、「既存の核弾頭を五〇〇〇ポンド級の貫通爆弾に入れてB61−11よりも相当に高い地中貫通能力を得られるかどうかを確認する」ことになるという。エネルギー省は、三月一四日の上院軍事委員会で、B61とB83の二つの核爆弾の修正について検討することになると述べている。前者は、ロスアラモス国立研究所、後者はローレンス・リバモア研究所がそれぞれ担当する。この修正は核実験を必要としないかもしれない。
 

核実験再開・新型核兵器開発に関する内部文書

1)「核兵器協議会メンバーへの覚え書き」2001年10月21日
“Memorandum for Members of the Nuclear Weapons Council,” October 21, 2001,  pdf (120kb),

米国の核政策を立案する「核兵器委員会(NWC)」に宛てたもので、執筆者は、委員長のE・C・オールドリッジ・ジュニア(取得・技術・兵站担当国防次官)。
「古くなってきているいくつかの核兵器システムを改修しなければならなくなるが、核兵器施設の限界のために元の設計通り完全に再生することはできないだろう。また、将来の新しい核兵器の必要に対応する用意がなければならない。」と述べて、核実験をしないで核兵器を維持することのリスクを検討するよう呼びかけている。また、小規模の核実験をすることの利点に付いても検討を指示している。
「それぞれの研究所が低威力の核実験の価値について再検討」することを提案

**米国国防省、核実験再開の利点について検討するよう指示

2)「核兵器維持管理会議」計画会議の議事録
Stockpile Stewardship Conference Planning Meeting Minutes 10 January 2003
 1)に従い2003年1月10日にペンタゴンで開かれた計画会議で招集は、デイル・クライン核・化学・生物防衛担当国防次官補。参加者32人。(制服組、NNSA、国防長官スタッフ)

 できれば8月4日の週にネブラスカ州オマハの戦略司令部で「核兵器維持管理会議」を開こうというもの。
8月の会議で検討する課題は次ぎようのなもの。
 低威力核兵器
 地中貫通型核兵器
 放射線強化兵器
 エージェント破壊用兵器
 核実験、新型兵器の少量生産、

3)上記会合の背景説明(ロスアラモス・スタディー・グループ:2003年2月14日付け)
http://www.lasg.org/hmpgfrm_b.html

4)<核兵器管理会議>米国が8月開催へ 小型核の研究開発も焦点に
毎日新聞2003年5月13日3時40分(ヤフー)

備考: 国防脅威削減機関(Defense Threat Reduction Agency (DTRA))の計画
ロスアラモス国立研究所の核兵器研究部門の責任者スティーブン・ヤンガーが長官

2003年1月に12億6000万ドルのコンピューターを使ったプログラムを開始。地下のターゲットについての評価と、地中貫通型兵器が必要かどうかを検討。

新型核の必要性を唱える議論

リード報告(統合戦略ターゲット計画スタッフ招集による「戦略抑止研究グループ」の報告書)

(議長:トーマス・リード元空軍長官)1991年秋、報告書のドラフトがマスコミにリーク

冷戦の終焉と米国の通常兵器の圧倒的な優位を見せつけた湾岸戦争を経て、核兵器への依存の放棄を訴える一般的風潮の中で、核の必要性を再構築しようとした試みとして注目される。

「登場しそうな核保有国」や「地域的侵略に介入しようとする米国その他を抑止しようと試みる」「専制国家」に対処するために核派遣軍の設置を提案。
核の先制使用のオプションを維持し、とくに生物・化学兵器の使用に対しては、核で報復することを提唱。

この報告書と次項の論文の意味合いについては、W・アーキンとR・ノリスによるブレティン・オブ・ジ・アトミック・サイエンティスツの記事が詳しい。

「十分な武装をした暴君に対処:小型核兵器のささやかな提案」

1991年秋
トーマス・ダウラー、ジョセフ・ハワード2世(ロスアラモス国立研究所のアナリスト)


Thomas Dowler and Joseph Howard II,“Countering the Well-Armed Tyrant:A Modest Proposal for Small Nuclear Weapons,"Strategic Review, Fall (1991), Vol.19, issue4, PP.34-40


タンクや部隊に対し小型核(1キロトン程度)を使うことを提案。
威力10トンの地中貫通型核兵器で「付随被害を抑えながら」地下深く埋設された堅固な施設を破壊するというアイデアも。

『二一世紀における核兵器』2000年6月

ロスアラモス国立研究所の核兵器研究部門の責任者スティーブン・ヤンガー

“Nuclear Weapons in the 21st Century”
Stephen Younger, LAUR-00-2850, June 27, 2000.

運搬手段の精度が高く、低威力の核兵器は、付随的な被害を減らすことができ、現在米国が保有している核兵器よりも、確信を持って、低コストで維持できる可能性がある。「将来の核戦力の役割と構成について再検討する時だ。」「五キロトンの核兵器が九メートルの厚さのミサイル・サイロのドアの上で爆発すれば、そのドアを蒸発させ、中のミサイルを壊すことができる。」ミサイルの投射重量の大きさを考えれば、このような低威力の弾頭は、広島原爆のようなガン・タイプの簡単な構造のものとすることもでき、そうすれば、丈夫で長持ちする。

『白書──二一世紀の核兵器政策を求めて』(2001年3月)

サンディア国立研究所のポール・ロビンソン所長

A White Paper:Pursuing a New Nuclear Weapons Policy for the 21st Century
by C. Paul Robinson, President and Director, Sandia National Laboratories

「私は、個人的には、予見できる将来においては、核兵器の廃絶は非現実的な夢と考えている。」「非ロシア世界に対する抑止としては、精度の高い運搬手段を伴った低威力の兵器がいいだろう。私がここで言っているのは、・・・数キロトンレベルの装置のことだ。付随的な損害を最小限に抑えることを考慮しながら、地中に埋められた、あるいは隠されたターゲットの破壊を考えるためのものだ。」ロビンソンは、水爆の起爆剤となっている原爆部分だけを使う方式にすれば核実験をしなくてもすぐに開発できると主張する。水爆部分はダミーにしてしまって、第一段階の原爆部分だけを爆発させる方式である


『米国核戦力及び軍備管理の原理と要件』(2001年1月)

「国家公共政策研究所(NIPP)」

Payne, Keith B. (study director) et al., Rationale and Requirements for U.S. Nuclear Forces, Vol. I, Executive Report, January 2001. (pdf)

執筆者のうちのスティーブン・ハドリーが国家安全保障担当大統領補佐官代理に、スティーブン・キャンボーンが国防長官特別補佐官に任命され話題を呼んだ。この論文は、国際的な戦略環境に対処するために「新しい[核]兵器を設計・製造する能力が必要」であり、「将来、地下の生物兵器施設のような堅固なターゲットに対する使用のために、単純で低威力の精密誘導核兵器を配備する必要がでてくるかもしれない」と述べ、単なる抑止のためではなく、使用するための核兵器について論じている。
 

国家公共政策研究所(NIPP)の最近の論文

Miller, Dr. Eric, "Bunker Busting Nuke Expands U.S. Options" Defense News, September 2002.(pdf)

Strategic Offensive Forces and the Nuclear Posture Review’s ‘New Triad’”(pdf)
National Institute for Public Policy - March 2003

フォスター・パネル(「米国保有核の信頼性・安全性・保安状態を評価するパネル」)報告書

1999会計年度予算で3年間の計画で設立された委員会の報告書(委員長は、ローレンスリバモア国立研究所のジョン・フォスター元所長)。2002年3月15日の報告は、「実験のタイプにより、3ヶ月から1年の実験準備態勢」とすることを全員一致で提案。
原文pdf、620kb)
2003年4月11日付最新版原文(pdf、340kb)

「堅固な地中深く埋められたターゲット(HDBT)の破壊に関する議会への報告(2001年7月

2001年会計年度国防歳出権限法で提出を義務づけられた報告書(2001年7月付け)。2001年10月に議会に提出。今のところRNEPが必要との結論に達していないとの内容。
(*原文pdf、531kb) 本文二五ページと機密の付録部分からなる。

 報告書によると、HDBT破壊用の兵器に関する研究は、湾岸戦争後、国防省内で、始まり、その後、同省とエネルギー省が核兵器の必要性について研究を進めている。一九九四年に、統合戦略軍(STRATCOM)と戦闘空軍(ACC)がHDBTの破壊能力の新たな開発が必要だとの結論を出した。それ以来、HDBT破壊のために使える核兵器及び非核兵器に関する研究が進められている。その一つは、一九九七年に始められ、九九年に完成した秘密研究『サンドデューン(砂丘)』である。この研究は、以前の研究が「通常兵器による解決方法に焦点を合わせたものであり、それが、すべてのHDBTを現在の兵器や計画中の兵器では破壊できないことを明らかにしたから」実施されることになった。

「HDBT破壊用に新型のあるいは改良型の核兵器を設計するための進行中の計画はない。しかし、国防省とエネルギー省は、確認された軍事的使命の必要に対処するための核兵器概念・・・について検討と評価を続けている。両省は、設計の実行可能性研究とコスト研究のための適切な範囲及びオプション選定基準を定めるために、共同核計画グループを設立した。詳細は、『機密付録Aセクション3−核兵器』の中で述べてある。」

 HDBT報告書は、これからの予定については、つぎのように述べている。「通常の高性能火薬兵器や現在の核兵器では攻撃できないHDBTを破壊するために既存の核兵器をどのように改良できるかについての初期的研究を終えた。」「向こう二年の間に国防省とエネルギー省が予算の決定ができるように、適切な核兵器及び通常兵器の実現可能性についての総合的な検討が進行中である。」

核実験の再開をほのめかすブッシュ政権

「差別化と防衛−−核兵器プログラムのアジェンダ」

共和党下院政策委員会 2003年2月

Differentiation and Defense: An Agenda for the Nuclear Weapons Program,” February 2003, pdf document 823kb.

草案を作成した共和党下院政策委員会の国家安全保障・外交小委員会のヘザー・ウイルソン委員長は、ニューメキシコ州のサンディア国立研究所を選挙区に持つ議員。

たとえば次のようなことを提唱。
核実験準備態勢を長くとも18ヶ月、場合によっては12ヶ月に短縮すること。
低威力核兵器の研究・開発の禁止条項を破棄すること。
地中貫通型核兵器を開発すること。

地中貫通型核兵器の問題点

「低威力地中貫通型核兵器」

ロバート・ネルソン 2001年
米国科学者連合(FAS)機関誌
1)Low-Yield Earth-Penetrating Nuclear Weapons, By Robert W. Nelson for the Federation of American Scientists

「低威力地中貫通型兵器」

ロバート・ネルソン 『科学と地球安全保障』誌2002年10号

上の論文の詳しい専門的バージョン。
R. Nelson, "Low-Yield Earth-Penetrating Weapons" (Science & Global Security) (PDF)

「ファイヤー・イン・ザ・ホール」

米国科学者同盟(FAS)の戦略的安全保障プロジェクト・ディレクターのマイケル・レビがカーネギー平和財団のワーキング・ペーパーとして発表した論文

See M. Levi, "Fire in the Hole: Nuclear and Non-nuclear Options for Counterproliferation" (Carnegie Endowment for International Peace)

「地中に埋められた生物兵器用生物体ターゲットに対する核兵器の効果」

マイケル・メイ 元ローレンスリバモア国立研究所所長(現在スタンフォード大学国際安全保障・協力センター)とZ.ハルデマン(スタンフォード大学院生)

M. May and Z. Haldeman, "Effectiveness of Nuclear Weapons against Buried Biological Agents Targets" (Center for Security and International Cooperation)

1−10キロトンの地中貫通型核兵器では生物兵器の貯蔵施設を攻撃して、生物体を殺傷してしまうと保障することはできないとするもの。

「戦略的選択:新型バンカー・バスターと核拡散防止」

シドニー・ドレル、R.ジーンロッツ、B・ピューリフォイ(元サンディア国立研究所副所長)
S. Drell, James Goodby, R. Jeanloz, and B. Peurifoy, "A Strategic Choice: New Bunker Busters Versus Nonproliferation" (Arms Control Today)

「地中貫通型兵器」

憂慮する科学者同盟(UCS)のデイビッド・ライトとL・グロンランド
D. Wright and L. Gronlund, "Earth-penetrating Weapons" (Union of Concerned Scientists)

「バンカーバスター核兵器の抱える科学的問題」

憂慮する科学者同盟(UCS)
2003年4月
The Troubling Science of Bunker-Busting Nuclear Weapons

予算説明

「ブッシュの核態勢見直しの最初の予算」

英米安全保障情報協議会(BASIC)による2003会計年度予算(+2004会計年度予算の説明

The Bush Nuclear Posture Review's First Budget In Congress, BASIC Paper 43, February 2003

「2004会計年度予算の核兵器関連活動要求」

行政管理予算局で長年エネルギー省の予算の分析をした経歴を持つロバート・シビアックによる分析。ローレンスリバモア国立研究所を監視する住民グループ「トライバリー・ケアーズ」の委託。

Fiscal Year 2004 Budget Request for Nuclear Weapons Activities, An Analysis by Dr. Robert Civiak for Tri-Valley CAREs (pdf)

新型核兵器をめぐる議論の概観

「米国の新世代の核兵器概論」

Briefing Book on Building A New Generation of American Nuclear Weapons(pdf)

「バンカー・バスターズ:新型核兵器を目指すワシントンの動き」

英米安全保障情報協議会(BASIC)による概論(pdf)

軍備管理協会(ACA)のファクトシート

New Nuclear Policies, New Weapons, New Dangers
Arms Control Association fact sheet - April 2003