核兵器
2003.8

北朝鮮の核問題

 北朝鮮の核開発についてはさまざまな情報がありますが、はっきりしているのは次のような点です。核兵器1〜2個に相当するプルトニウムを持っている可能性がある。それを使って核爆弾、さらには、ミサイル用核弾頭の製造に成功しているかどうかは不明。1994年に取り出した使用済み燃料を再処理すれば、さらに5〜6個分のプルトニウムを取り出せる。再処理施設は数ヶ月でこれだけの使用済み燃料を再処理する容量を持っているが、実際にうまく稼働するかどうかは不明。今回の事態のきっかけとなった疑惑のウラン濃縮施設は場所も特定されていないが、未完成との見方が一般的。
 たとえ1〜2個の核弾頭の製造に成功していたとしても、なけなしの弾頭をノドンに積むかどうかは疑問です。ただ、5〜6個持つとなると事情は変わってきます。実際に開発できているかどうか、また、それをミサイルに搭載する意図があるかどうかは別として、周辺国や米国にとっての重要性は、1〜2個持っているかもしれないという場合とは大きく違ってきます。つまり、すでにある使用済み燃料の再処理を防ぐことが極めて重要です。
 さらに運転再開が宣言された実験用原子炉は最大出力で運転すると、年間6キロ、原爆1個分ほどのプルトニウムが原子炉にたまります。1994年以来凍結されていた2基の黒鉛減速炉の建設が再開され、数年後に運転開始となると、3基合わせて年間210〜280キログラム、核兵器40〜55個分のプルトニウムがたまることになります。このような事態を防ぐために、1〜2個分のプルトニウムについては、一時不問にして、さらなる核開発を凍結するのと引き換えに電気出力100万キロワット級の軽水炉2基を提供することにしたのが、1994年の「枠組み合意」なのです。
 制裁を加えても、それによって根を上げる前に北朝鮮は核保有への道を突っ走ってしまう可能性があります。イラク型の攻撃を米国が試みれば、韓国を巻き込んだ戦争になって多大の被害が両国ででてしまう恐れがあります。北朝鮮の安全保障と核計画の完全放棄とを確保するための交渉が急がれます。

日本のミサイル防衛

 日本政府は、6月「21日、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗する弾道ミサイル防衛体制を本格的に構築するため、ミサイルを大気圏外で迎撃するイージス艦搭載のスタンダードミサイル3(SM3)と、地上付近で迎撃する最新鋭の地対空誘導弾パトリオット・ミサイル(PAC3)を導入する方針を固めた」と報じられていますが、本当にミサイルが飛んでくるとすれば頼りになりそうにありません。
 皮肉なことに右の記事がでたのは、6月18日に海上配備型システムの4度目の迎撃実験が失敗した直後のことでした。成功したことになっている最初の3回の実験について、米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」のミサイル問題専門家デイビッド・ライトは、次のように言います。実験は、「すべて、射程700キロメートルの実験ミサイルに対するものだ。そしてこれらのテストでは、ブースター(推進部分)と弾頭が一体となったミサイルを標的にしている。だから、標的は非常に大きいものとなっている。ノドン[射程1300キロ]では、弾頭が切り離される。テストで迎撃体が衝突したのは、ミサイル本体であって、弾頭部分ではない。従って、ノドンに対してどう機能するかは全く分からない。」そもそも、このシステムは役に立たないからと、途中で放棄して次の段階のシステムの研究・開発に移ることが検討されていました。日本が技術協力を要請されたのは、後者の方なのです。また、PAC3は、イラクで活躍したことになっていますが、撃ち落としたのは射程150〜200キロメートル程度のミサイルです。また、「犯人」がPAC3かその前身のPAC2か不明ですが、イラク戦争では、PACシステムは、英国軍の飛行機を撃墜したり、米軍機に照準を合わせて発射態勢に入ったために、その米軍機から攻撃を受けたりしています。また、一つのユニットで半径30キロメートルほどの地域しかカバーできません。こういうシステムを配備して、安全になったつもりで、撃つなら撃って見ろという調子の外交を進めるのは危険です。

北東アジア非核地帯

 朝鮮半島と日本を合わせた地域を非核地帯にしようという提案が実現に向かわないのはなぜでしょうか。一つの原因は日本にあります。非核地帯には核兵器を置かないと同時に、核保有国が地帯内の国に核攻撃を仕掛けないとの保証をする必要があります。ところが日本は、生物・化学兵器及び大量の通常兵器による攻撃に対する抑止として核による報復のオプションを米国に持っていて欲しいとの立場を表明しています。また、北朝鮮は、核兵器計画の放棄の前提として、米国による体制の保証を要求しています。通常兵器の攻撃や経済制裁による体制変換を試みることを北朝鮮は恐れているのです。核兵器の保有が真の安全保障につながらないことは明らかですが、単に非核地帯の創設を呼びかけるだけでは、北朝鮮に対する説得力を持てません。