核兵器
2003.8〜

核保有国の核兵器状況

 米国の「自然資源防護協議会(NRDC)」によると、5つの公式の核保有国は、現在、約2万発の核弾頭を保有しています──内訳は、米(1万800)、ロ(8600)、英(200)、仏(350)、中(400)。1986年のピーク時の合計(約6万5000発)と比べれば減っています。ただし、2万発という数字には、ロシアが「無傷のままで」保存している弾頭が入っていません。NRDCは、その数を約1万発と推定しています。これを合わせると世界の核兵器の合計は、約3万発になります。その内1万7500発がすぐに使える状態にあります。これに、インド(30−35発)、パキスタン(24−48発)、イスラエル(200発)を加えたのが世界の合計となります。さらに、北朝鮮が持っているかもしれないとされる1−2発が加わるのかもしれません。

危機を高める米国の核配備

 米国の配備している核兵器に即して偶発的核戦争の問題を見ていきましょう。下の表は、米国の核兵器の配備の状況を示したものです。「攻撃対象のほとんどは、ロシアと中国です。

種類  名前  運搬手段数  配備年 弾頭名,威力(kt) x 搭載個数 弾頭数:
配備/スペア
ICBM   
       ミニットマン III(LGM-30G)     
    Mk-12 150 1970 W62,170 x 1 150
    Mk-12 50 1970 W62, 170 x 3 150/15
    Mk-12A 300 1979 W78, 335 x 3 900/20
MX/ピースキーパー(LGM-118A) 40 1986 W87, 300 x 10 400/50
合計  540    1,600/85
SLBM    
     Trident I(UGM-96A) C4 96/4 1979 W76, 100 x 6 576
Trident II(UGM-133A) D5 288/12      
  Mk-4   1992 W76, 100 x 8 1,920/156
  Mk-5   1990 W88, 475 x 8 384/16
合計  384/16    2,880/172
爆撃機    
    B-52 Stratofortress 94/56* 1961 ALCM/W80-1, 5〜150 430/20
      ACM/W80-1, 5〜150 430/20
B-2 Spirit 21/16 1994 B61-7, -11, B83-1 800/45
合計  115/72    1,660/85
非戦略核      
   トマホーク (SLCM) 325 1984 W80-0, 5〜150 320
B61-3, -4, -10 bombs n/a 1979 0.3〜170  800/40
合計  325    1,120/40
総計    約7,650 
ACM=最新型巡航ミサイル、ALCM=空中発射巡航ミサイル、SLCM=潜水艦発射巡航ミサイル
*94は総機数(訓練・実験・予備用を含む)、56は、実際のミッションに割り当てられている作戦配備機数
出典:Bulletin of the Atomic Scientist, May/June 2003

 核弾頭の配備数は、合計約7650発。内訳は、戦略核が6140発(スペア342発)、戦術核が1120発(スペア40発)。このほか、「無傷のままで」保存されているものが3000発ほどあります。短期間、あるいは数週間、数年かけて配備に戻せる核兵器です。これらを合計すると約1万発になります。さらに、核弾頭を解体して部品のかたちで維持されているものが約5000発。クリントン大統領時代に定められた1万発プラス5000発分という基本計画は、ブッシュ政権の『核態勢の見直し(NPR)』(2001年12月31日付け)でも変わっていません。
 米国が現在配備している大陸間弾道弾(ICBM)は、ミニットマンIII(500基)とピースキーパー(MXミサイル)(40基)の2種類(計540基)です。配備核弾頭の数にして、1600発(+スペア85発)。前述の通り、この98%が2分で発射できる態勢におかれているのです。
 ICBMで去年と違うのは、ピースキーパーの数が50基から40基に減っていることです。1基で10発搭載できるので、去年と比べ100発の減少です。このミサイルは、STARTIIで廃棄処分となるはずのものでした。「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)」制限条約の遵守を前提としていたSTARTIIは、米国によるABM制限条約から脱退によって結局発効せずに消えてしまいましたが、ピースキーパーは、当初計画通り昨年10月から3週間に1基の割合で配備から外されています。ただ、STARTIIは、配備から外されたミサイルとサイロを破壊するよう定めていましたが、現在の計画では、両方とも維持されます。しかも、引退の直前まで、すぐに発射できる警戒態勢におかれると言うことです。500基あるミニットマンは、去年のままです。1基に1発搭載のものと、3発搭載のものがありますが、2007年までには、すべて1発の搭載となります。

ロシアのミサイルをねらう米戦略原潜

 戦略原潜の数は、昨年の18隻から16隻に減り、配備されている核兵器の数も、ミサイル432基、核弾頭3120発から384基、2880発に減りました。10月にはさらに2隻が、ミサイルをおろし、戦略原潜としての役割を終える予定です。戦略原潜の役割から解かれたこれらの4隻は、2008年までに通常弾頭のトマホーク搭載用に改修される予定です。
 戦略原潜のミサイルは、トライデントI C4と、それよりも命中精度の高い(約100メートル)トライデントII D5の2種類あります。戦略原潜の核弾頭でとくに問題なのは、W88と呼ばれるものです。W88を入れたMk5という型の(大気圏内への)再突入体が8個ずつトライデントII D5に搭載できます。W88は、米国のミサイル用核弾頭の中で最大の威力(475キロトン)を持っています(広島16キロトン)。精度の高さと威力の大きさのため、ミサイルのサイロや地下指令施設などを破壊する能力を持っており、ロシアにとってはまさに脅威です。これが発射から10分以内で飛んでくるかもしれないのです。戦略原潜には発射管が24ありますから、1隻で 192発搭載できます。(ただしW88は、約400発しか製造されていません。)このW88を威力の小さいものに代えるだけでロシアは少し安心できます。さらに、戦略原潜をロシア近海から遠ざければ、ミサイルの到着時間が長くなり、それだけ「反撃」の決定までに残された時間が長くなります。戦略原潜がミサイルの射程距離より離れていれば、さらに安心です。

米戦略爆撃機搭載の核爆弾と地中貫通型

 米国の戦略爆撃機は、B52とB2の2種類です。現在では、どちらも、すぐに発進できる警戒態勢にはありません。B52は、巡航ミサイルと(ALCMと新型のACM)と核爆弾のどちらでも搭載できます。NRDCは、B52用にACLMとACMがそれぞれ430発ずつ配備されていると見ています。B2は、核爆弾しか積めません。B61−7、B61−11、B83の3種の核爆弾が合計800発配備されています。B61−11は、B61−7の弾頭に新しいケースを与えて地中貫通型にしたもので、1997年から約50発配備されています。
 戦術核としては、潜水艦発射用巡航ミサイル(トマホーク)弾頭320発(5〜150キロトン)とB61のシリーズの核爆弾(0・3〜170キロトン)800発があります。後者のうち約150発がNATOの6カ国に配備されていて、いざとなれば非核保有国のパイロットがこれらを運んで投下することになっています。

参考: ロシアの核配備

 タイプ 名前 運搬手段数 配備年 搭載個数 ×威力 kt
ICBM
SS-18 Satan 138 1979 10 x 550/750 (MIRV) 1,380
SS-19 Stiletto 134 1980 6 x 550/750 (MIRV) 804
SS-24 M1 Scalpel 36 1987 10 x 550 (MIRV) 360
SS-25 Sickle 342 1985 1 x 550 342
SS-27 30 1997 1 x 550 30
合計  680    2,916
SLBM 
SS-N-18 M1 Stingray 96 1978 3 x 200 (MIRV) 288
SS-N-20 Sturgeon 40 1983 10 x 100 (MIRV) 400
SS-N-23 Skiff 96 1986 4 x 100 (MIRV) 384
合計  232    1,072
爆撃機     
Tu-95 MS6 Bear H6 34 1984 6 x ALCM 核爆弾搭載可 204
Tu-95 MS16 Bear H16 30 1984 16 x ALCM 核爆弾搭載可 480
Tu-160 Blackjack 15 1987 12 x (ALCM又は SRAM), 核爆弾搭載可 180
合計  79    864
総計  991    約4,850
ALCM=空中発射巡航ミサイル、 SRAM=短射程攻撃ミサイル
出典:Bulletin of the Atomic Scientist, July/August 2003