核兵器
2004.6.26

米国核兵器「大幅」削減計画発表

─ 付: (最新) ロシアの配備戦略核データ

 エネルギー省は、6月3日、2012年までに現在ある総量約1万発の核兵器を大幅に減らすとの報告書を6月1日に議会に提出したと発表しました
詳細は発表されていませんが、「自然資源防護協議会(NRDC)」は、現在の1万640発を約6000発にする計画だと見ています。 配備から外されたもののうち、約4600発が解体にまわされることになります。歓迎されるものではあるが、遅きに失しており不十分だというのが反核団体の反応です。以下、NRDCの分析と背景とをまとめてておきます。なお、この分析をしたメンバーの一人、ハンス・クリステンセンは、今年の原水禁国際会議に出席の予定です。

 表1は、2004年現在の米国の保有核と2012年時点での保有核についてのNRDCの分析をまとめたものです。保有数は約1万640発。このうち、約7000発が配備されています。

表1 米国の保有核 (NRDCのデータ)

威力(KT) 保有数 2012年
保有数
運搬手段 配備/スペア
戦略
ICBM(大陸間弾道ミサイル)用    
 W62 170 615 ミニットマン3 300/15
 W78 335 920 420 ミニットマン3 900/20
 W87 300 550 550 ピースキーパー 290/50
小計 1490/85
SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)用    
 W76 100 3200 1700 トライデント1/2 2352/156
 W88 475 400 400 トライデント2 384/16
小計 2736/172
戦略爆撃機用    B52及びB2
 W80-1 5−150 1800 800 ALCM/ACM 860/40
 B61−7 10−350まで 470 470 (戦略爆弾) 800/45
 B61−11 単一 55 55 (貫通型戦略爆弾)
 B83−0/1 低−1200 620 620 (戦略爆弾)
小計 1660/85
非戦略    
 W80ー0 5−150 320 320 SLCM 320
 B61−3/4 0.3−170 1290 690 (戦術爆弾) (貯蔵)
800/40
 B61−10 0.3−80
小計 1120/40
 W84 400 GLCM(INF条約で配備禁止)
10640 6025 約7000/382

 ALCM: 空中発射巡航ミサイル
 ACM: 最新型巡航ミサイル
 SLCM: 海上発射巡航ミサイル
 GCCM: 地上発射巡航ミサイル
出典: Arms Control Today May 2004 及び Bulletin of the Atomic Scientists May/June 2004 、NRDCウェブサイトより作成

 表にある13種の弾頭と2種の予備弾頭(W84とB83−0)が「持続的保有核」と呼ばれ、これらを長期に維持するというのが、2001年12月付けの『核態勢の見直し』の計画でした(W62は09年に引退)。(「中距離核戦力(INF)」条約で配備の禁止された地上発射巡航ミサイルに搭載されていた核弾頭W84は、別の用途に使う可能性があるということで保存されています。)このほかに解体されてピットの形で保存されているものが5000発分あります。(ピットは、水爆の引き金の役目を果たす原爆部分の芯(ピット)になる部分で、中空の球状プルトニウムからなる。)実は、この1万発プラス5000発、計1万5000発を維持するというのはクリントン政権で決められたものでした。
 配備から外される弾頭は、比較的短期間で搭載できる形で維持する「アクティブな(現役)」状況対応予備、あるいは、寿命の限られた部品・材料などを外して維持する「イナクティブ(非現役)」予備として保存されます。つまり、総量約1万という数字はほとんど変わらず、その中の現役配備、スペア、現役予備、非現役予備などの配分が変化するという計画でした。

NRDCは、この配備から外された核弾頭のうちつぎの4600発が2012年までに引退・解体されると分析しています。

弾頭タイプ
W62 (MM III) 600
W78 (MM III) 500
W76 (Trident I) 1,500
W80-1 (ACM/ALCM) 1,000
W84 (GLCM) 400
B61-3,-4,-10 600
合計  4,600

これらを除くと、表にあるように、2012年に保有核合計が6025発になると言うのがNRDCの分析です。今から8年も先にやっと総数6000発態勢になるといわれても、1万発強よりは良いとしても、あまりありがたみがありません。もっと急速に多量に解体計画を進めるべきでしょう。ただ、パンテックス工場の解体能力によって限度があることは事実です。──「米国の核兵器解体状況と核開発の歴史的データ

削減報告書の背景

米国2004年度予算と新型核兵器」にあるように、米国議会は、エネルギー省は)今年度予算の「最新型ピット生産施設(MPF)」設計作業用要求額(2280万ドル)の半分(1080万ドル)に減額しましたが、その際、将来維持する核兵器の数を明確にする必要を指摘していました。また、新しい核兵器関連システムについて新しいことを考える「先端概念イニシアチブ(ACI)」用予算 600万ドルのうち400万ドルは、保有核の削減計画の詳細な報告書を政府が出すまで使用してはならないとしています。
 エネルギー省が6月1日に提出した削減計画報告書は、この議会の命令を受けて、これだけ削減するから、いざというときに備えて、1)MPFや2)ACI、3)核実験準備態勢向上用などの予算を認めて欲しいと要請したものです。
 エネルギー省「国家核安全保障局(NNSA)」のリントン・ブルックス長官は、議会にあてた書簡の中で次のように述べています。

 1)2)、3)の「プログラムが完了し、新しい事態に対応するインフラが実現されれば、米国は、その安全保障に対する問題が将来生じてもそれに対応する能力を高めているとの認識の下に安心して、その保有核を削減する機会を持つことになる。」

ピット生産施設の拡充計画

 1989年に米国コロラド州ロッキーフラッツのピット製造工場が安全性や環境への影響などの問題のため閉鎖となって以来失われていたピット生産能力を回復するための計画が二段階で進められています。
 エネルギー省は、まず、1996年に、ロスアラモスのプルトニウム施設を改修して年間80個のピット製造能力を持たせるという計画を策定しました。現在2007年までに年間20個の製造能力を達成するための作業が進んでいます。製造実験がすでに行われていて、3月段階で5個が製造されています。最終的には、1日8時間運転で、80−150個/年の製造能力に拡大する計画です。
 もう一つは、まったく新しい施設(MPF)を建設し、2018年に最大年間450〜900個の製造能力を持たせるというものです。1年で中国の総量に相当するピットが製造できる能力です。ピットの寿命は最低で40−60年といわれていますから、順次作り替えるとすれば、年間80個でも、3200個〜4800個のストックを維持できるはずです。
 さらに削減を進める計画を立てれば、MPFが必要になるはずがありません。考えられるのは短期間に冷戦時代のような核戦力を再構築する場合のためか、エネルギー省の雇用計画のためかです。

(MPFの詳細については、『アームズ・コントロール・トゥデイ』誌に掲載されたフランク・フォン・ヒッペルとスティーブ・フェターの共著論文を参照:Does the United States Need a New Plutonium-Pit Facility? Steve Fetter and Frank von Hippel )

 

参考: ロシアの配備戦略核

 (約4400発、戦術核は3400、計7800発)

 タイプ 名前 運搬手段数 配備年 搭載個数 ×威力 kt
ICBM
SS-18 Satan 120 1979 10 x 550/750 (MIRV) 1,200
SS-19 Stiletto 130 1980 6 x 550/750 (MIRV) 780
SS-24 M1 Scalpel 15 1987 10 x 550 (MIRV) 150
SS-25 Sickle 312 1985 1 x 550 312
SS-27 (Topol-M) 36 1997 1 x 550 36
合計  613    2,478
SLBM 
SS-N-18 M1 Stingray 96 1978 3 x 200 (MIRV) 288
SS-N-20 Sturgeon 40 1983 10 x 100 (MIRV) 400
SS-N-23 Skiff 96 1986 4 x 100 (MIRV) 384
合計  232    1,072
爆撃機     
Tu-95 MS6 Bear H6 32 1984 6 x ALCM 核爆弾搭載可 192
Tu-95 MS16 Bear H16 32 1984 16 x ALCM 核爆弾搭載可 512
Tu-160 Blackjack 14 1987 12 x (ALCM又は SRAM), 核爆弾搭載可 168
合計  78    872
総計  923    約4,422
ALCM=空中発射巡航ミサイル、 SRAM=短射程攻撃ミサイル
出典:Bulletin of the Atomic Scientist, July/August 2004