核兵器
2007.4.27

プレス・リリース

2007年4月27日
原子力資料情報室(CNIC)
原水爆禁止日本国民会議

米印原子力協力について経産省、日本原子力研究開発機構に公開質問状
原子力資料情報室のワイト氏、NPT再検討会議準備委員会で米印原子力協力に焦点

原子力資料情報室と原水禁は、4月26日、経産省と日本原子力研究開発機構に、米印原子力協力に関する両者の姿勢を質す公開質問状を送付しました。

○背景:

 米国が昨年制定した「米印原子力協力法」は、核不拡散条約禁止条約(NPT)に加盟せず、核実験を行い、核兵器計画を進めているインドに対し米国が原子力関連輸出を行うことを認めるものです。

 米印の協力が実施されるには、日本も加盟している原子力供給国グループ(NSG、45ヶ国)による規則の変更が必要ですから、国際的にも被爆国日本の立場が注目されています。4月のNSG総会では、インド・IAEAの交渉、米印間の協定文の交渉とも進展がなかったため、この問題は議論されませんでした。

○産業界の考え:

 核兵器関連技術につながるインドへの原子力協力には、日本の原子力産業の重鎮からも問題点が指摘されています。日本原子力研究開発機構主催の「核不拡散科学技術国際フォーラム」(2006年5月18─19日 後援:原子力委員会、文部科学省、経済産業省、外務省)でのキーノート・スピーチで、米印原子力協力に関連して、秋元勇巳日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会委員長(三菱マテリアル(株)名誉顧問)が懸念を表明しています。

 秋元氏は、米印の合意が「高速炉、再処理、濃縮など、戦略プログラムに係わる核燃料サイクル施設を保障措置の対象としなかったこと」を問題にし、「これでは、他国から供給される燃料を民生用に利用することによって、これまでそれに充てていた自国の資源を核兵器製造に利用することができ、結果としてインドの核兵器生産を助長することになるのではないか、という懸念」があると指摘しています。

○外務省関係機関の声:

 また、外務省関係機関の間にも米印原子力協力を批判する声があります。例えば、日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの小山謹二客員研究員は、「この協力協定は単に米国とインド2国間の問題では無く、NPTを中心とする核不拡散体制の崩壊にも繋がりかねないものである。日本外交の主要な柱の1つとして『核兵器の廃絶と核不拡散体制の強化』を推し進めている我が国にとっては『成り行きを注視しつつ大勢に従う』という第3者的な対応は許されない。」と早くから指摘していました。小山氏は、元日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)主任研究員、科学技術庁(現文科省)保障措置参与、IAEA常設保障措置実施諮問委員会日本代表、日本原子力研究所保障措置技術研究室長などを歴任した人です。

○経産省、日本原子力研究開発機構への公開質問状:

 原子力資料情報室と原水禁が4月26日に経済産業省と日本原子力研究開発機構に送付した公開質問状は、主として、秋元氏の指摘についての両者の見解を質すとともに、「現在は、高速増殖炉は研究開発段階にあり、この期間は、大量の核物質を動かすことが必要だ。この段階での保障措置は、技術開発の妨げになる。」とするインドの政府関係者の主張を認めるかと問うものです。

○NPT再検討会議準備委員会(ウィーン)関連行事での活動

5月4日(10:30ー12:30)「米印核取引とNPTの将来:NSGの役割?」(各国代表団向け米印原子力協力問題セミナー)

共催:原子力資料情報室、INESAP(拡散に反対する国際科学技術者ネットワーク)、IPFM(核分裂性物質関する国際パネル)、原水禁

5月5日 アボリション・グループ会合

ウイーンでは、原子力資料情報室のフィリップ・ワイト(5月2─6日滞在予定)が、NSGで米印原子力協力を承認させないよう各国のNGOと連携して活動します。ワイトは、ウラン輸出国のオーストラリア出身でもあり、オーストラリアのグループとも一緒に戦略を立て、キャンペーンを計画する予定です。オーストラリアでは、今年後半に行われる選挙に向けてNGOが積極的にこの問題に関するロビー活動を始めています。最大野党のオーストラリア労働党が勝利すると見られていますが、そのポジションが鍵になります。同党は現在までNPT非加盟国へのウラン輸出には反対し続けています。

○地方議会意見書

 日本国内でも、佐賀県など自治体から米印原子力協力の問題に関して意見書が出されています。この協力が実施されると、印パの核軍拡競争に拍車がかかる可能性があり、私たちはこのことを深く懸念しています。

配布文書リスト

  1. 1)経済産業省宛質問状
  2. 2)日本原子力研究開発機構宛質問状
  3. 3)参考資料
    1. 核兵器廃絶への道は閉ざされるのか─米印原子力協力協定の及ぼす影響』(2005年12月28日)
      小山 謹二財団法人日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター 客員研究員
    2. 核兵器廃絶への道は閉ざされるのか?2 ヘンリー・ハイド米印原子力平和利用協力法の成立』(pdf) (2007 年2 月28 日)
      小山謹二 財団法人日本国際問題研究所 軍縮・不拡散促進センター 客員研究員
    3. 核兵器の材料を提供しながら核廃絶? 米印原子力協力と日本
    4. 米印原子力協力問題意見書用参考資料
    5. NPTの根幹を揺るがす米印原子力協力
    6. 米プリンストン大学ジヤー・ミヤーン(パキスタン出身)論文
      1. (1)『世界』2006年10月号「誤った目的、手段、必要─米国とインドの<核取引>の影で」(原文─英語)
      2. (2)『世界』2007年6月号掲載予定インタビュー
      3. (3) 私の視点『南アジアの核:米印原子力協定は火に油』
    7. 意見書まとめ(含 佐賀県議会意見書)─参考

特定非営利活動法人 原子力資料情報室(CNIC)

〒164-0003 東京都中野区東中野1-58-15 寿ビル3階 TEL.03-5330-9520 FAX.03-5330-9530

原水爆禁止日本国民会議

〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館1F

TEL:03-5289-8224 FAX:03-5289-8223

インドとの核兵器関連技術の協力に関する公開質問状

茨城県那珂郡東海村村松4番地49 /(東京事務所)千代田区内幸町2丁目1ー8 新生銀行本店ビル11
日本原子力研究開発機構
理事長 岡俊雄 様

原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 事務局長 福山 真劫

貴機構主催の「核不拡散科学技術国際フォーラム」(2006年5月18ッ19日 後援:原子力委員会、文部科学省、経済産業省、外務省)でのキーノート・スピーチにおいて秋元勇巳日本経済団体連合会資源・エネルギー対策 委員会委員長(三菱マテリアル(株)名誉顧問)が懸念を表明している米印原子力協力に関連して質問させて頂きます。

秋元氏は、「米印原子力協力についていくつか問題があるのも事実です」と述べ、そのうちの一つを次のように指摘しています。

「もう一つ問題とされるのは、3月の合意内容において、高速炉、再処理、濃縮など、戦略プログラムに係わる核燃料サイクル施設を保障措置の対象としなかったことです。これでは、他国から供給される燃料を民生用に利用することによって、これまでそれに充てていた自国の資源を核兵器製造に利用することができ、結果としてインドの核兵器生産を助長することになるのではないか、という懸念があります。この懸念を払拭するためにも、研究開発段階のものも含めて核燃料サイクル施設全体への保障措置を適用したり、兵器用核分裂性物質の生産を禁止するなどの措置が必要です。単に条約交渉に取り組むと言うだけではなく、その枠組みをしっかりと設けることが重要でしょう。」

なお、『ニュークリオニクス・ウイーク』誌(2007年4月12日号)は、「現在は、高速増殖炉は研究開発段階にあり、この期間は、大量の核物質を動かすことが必要だ。この段階での保障措置は、技術開発の妨げになる。」とするインドの政府関係者の発言を紹介しています。

以上、5月13日まで文書にて回答頂くようお願い申し上げます。

連絡先:原水爆禁止日本国民会議
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11総評会館1F


経済産業大臣 甘利明 様

インドとの原子力協力に関する質問

2007.4.26
原子力資料情報室 共同代表 伴 英幸
原水爆禁止日本国民会議 事務局長 福山 真劫

米国が昨年制定した「米印原子力協力法」は、核不拡散条約禁止条約(NPT)に加盟せず、核実験を行い、核兵器計画を進めているインドに対し米国が原子力関連輸出を行うことを認めるものです。この協力が実施されると、印パの核軍拡競争に拍車がかかる可能性があると指摘されており、私たちはこのことを深く懸念しています。米印の協力が実施されるには、日本も加盟している原子力供給国グループ(45ヶ国)による規則の変更が必要ですから、国際的にも被爆国日本の立場が注目されています。

政府は、日本政府の態度について、「検討中」と説明していますが、日印「両国関係強化と日米同盟重視の観点」や、「日本企業が原子力発電所建設などに参入すること」などを考慮して、米印の原子力協力を容認する方向だと報じられています。

容認論の裏に産業界の意向があるとのではないかと窺わせます。

ところが、日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会委員長を務める秋元勇巳氏(三菱マテリアル(株)名誉顧問)は、米印原子力協力について、懸念を表明しています。しかも、それは、日本原子力研究開発機構主催の「核不拡散科学技術国際フォーラム」(2006年5月18ッ19日 後援:原子力委員会、文部科学省、経済産業省、外務省)におけるキーノート・スピーチの中でのことです。

秋元氏は、「米印原子力協力についていくつか問題があるのも事実です」と述べ、そのうちの一つを次のように指摘しています。

「もう一つ問題とされるのは、3月の合意内容において、高速炉、再処理、濃縮など、戦略プログラムに係わる核燃料サイクル施設を保障措置の対象としなかったことです。これでは、他国から供給される燃料を民生用に利用することによって、これまでそれに充てていた自国の資源を核兵器製造に利用することができ、結果としてインドの核兵器生産を助長することになるのではないか、という懸念があります。この懸念を払拭するためにも、研究開発段階のものも含めて核燃料サイクル施設全体への保障措置を適用したり、兵器用核分裂性物質の生産を禁止するなどの措置が必要です。単に条約交渉に取り組むと言うだけではなく、その枠組みをしっかりと設けることが重要でしょう。」

一方、『ニュークリオニクス・ウイーク』誌(2007年4月12日号)は、「現在は、高速増殖炉は研究開発段階にあり、この期間は、大量の核物質を動かすことが必要だ。この段階での保障措置は、技術開発の妨げになる。」とするインドの政府関係者の発言を紹介しています。

以下、質問します。

以上、5月13日まで文書(またはメール)にて回答頂くようお願い申し上げます。

原子力資料情報室 東京都中野区東中野1-58-15-3F 
e-mail: cnic@nifty.com




日本原子力研究開発機構からの回答

平成19年5月11日

原子力資料情報室御中
原水爆禁止日本国民会議御中

2007年4月27日付け質問状に対するご回答

4月27日付けでご質問のありました件について、以下のとおり回答いたします。

質問1)ー3):
原子力機構はインドと高速炉、再処理、ウラン濃縮に関する協力を行っておりません。現時点では将来の協力の予定もありません。

質問4):
原子力機構としてはIAEAの保障措置の下で高速増殖炉を含む研究開発を行なっております。

日本原子力研究開発機構
広報部

経産省からの回答

インドとの原子力協力に関する質問に対する回答

平成19年5月17日
原子力政策課

 平成19年4月26日付け「インドとの原子力協力に関する質問」につきまして、以下のとおり回答いたします。

1)日本の産業界が抱く懸念について、政府内でどのような検討がなされていますか。

2)日本政府関連機関及び産業界がインドとの原子力協力を行うに当たって、インド側がどのような条件を満たすことが重要とお考えでしょうか。

─1)および2)への回答─
 インドへの原子力協力の問題については、現在外務省で取り扱っております。

3)インド側は、研究開発段階にある高速増殖炉を保障措置下に置くと技術開発はできないと述べていますが、「FBRサイクル実証プロセスへの円滑移行に関する五者協議会」(経済産業省、文部科学省、電気事業連合会、(社)日本電気工業会、(独)日本原子力研究開発機構)の枠組みなどで高速増殖炉の研究開発に深く関わっている経済産業省は、これを認めますか?

─3)への回答─
  我が国においては、IAEAの保障措置の下で、高速増殖炉の研究開発を実施していると認識しています。

以上