核兵器
2008.6.20

NATO復帰を明記のフランス国防白書に核軍縮行動計画も──キッシンジャーらの核廃絶論の影響?

近くフランス議会に送られる国防白書で、フランスが1966年に脱退した「北大西洋条約機構(NATO」に来年にも復帰することが明記されていると各紙が報じています。在英フランス大使館のサイトにある白書の詳細な説明文 (英文、pdf)には、「核軍縮:フランスの行動計画」という部分があり、米中を含む各国による「包括的核実験禁止条約(CTBT)」批准の呼びかけなど7項目が挙げられています。これらは、大統領の3月21日の演説にあったもので、「核不拡散条約(NPT)」再検討会議準備委員会での同国の演説(4月26日)でも触れられていました。

3月21日にシェルブールでの新型ミサイル搭載原子力潜水艦テリーブルの進水式でサルコジ大統領が行った演説(在英仏大使館:英文)は、核抑止への依存を明確にする一方で、核軍縮政策を強調した点で注目されました。フランスの戦略研究財団のブリュノ・テルトレは、カーネギー国際平和財団のサイトに掲載された記事『フランスと核軍縮:サルコジ演説の意味』の中で、サルコジ演説がフランスの大統領としては異例の長さを核軍縮に割いたことの意味を次のように分析しています。

サルコジ演説が軍縮に焦点を当てた理由はいくつか考えられる。フランスの大統領がこの問題に関する同国の見解を説明してからずいぶん時間がたっていた。最後に説明があったのは、1996年6月のジャック・シラクの演説だった。英国の政策発表や[キッシンジャーら]米国の4人の政治家のイニシアチブなどを始めとするさまざまな、政府及び非政府のイニシャチブが、核軍縮を国際的な安全保障議論の中心に据えることに成功した。パリがこの議論においてもっと目に見えるプレーヤーになることが必要だと感じる人々がいた。一つには、この分野におけるフランスの過去の行動の重要性が──正しいかどうかは別として──十分に認識されていないとしばしば考えられているからである。そして、次のNPT再検討会議まで2年しかないからでもある。また、サルコジは、これまでの新しく就任した大統領と同じく、フランスの抑止力の「十分なレベル」について検討を終えたところだった。最後に、軍縮にもっと注意を払うというのは、核政策に対する新しい、よりモダンに見えるアプローチだとみなす人々がいた。

このような背景の下に、サルコジ大統領は、フランスにとっての核抑止の重要性を強調する一方で、核軍縮政策を発表しました。航空機搭載の核兵器を3分の1削減し、核兵器の総数を冷戦時代の半分の300発以下にすると述べるともに、他の核保有国などに行動を呼びかけました。国防白書の説明では、これを7項目に整理しています。下に訳出したNPT準備委員会での軍縮大使演説では8項目になっていますが、8つ目は、3月21日の演説にもあった「軍縮の他のすべての分野での行動」です。

2007年「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」年鑑は、2007年の配備状況について、航空機搭載の核兵器が60発、潜水艦搭載が288発と推定していました。

なお、ル・トリオンファン級弾道ミサイル原子力潜水艦第4番艦(最後)ル・テリーブルは、2010年に、就役予定です。射程の長い新型潜水艦発射弾道ミサイルM51(射程8000km以上)を搭載します。他の3隻のミサイルも順次M51に換えていく予定です。

以下、NPT再検討会議準備委員会におけるドベル仏大使の演説(4月28日, pdf)の核軍縮関連部分の粗訳を載せました。全体の3分の2ほどが、原子力の普及の重要性とイランや北朝鮮の核拡散問題に充てられています。訳出したのは、最後の3分の1です。

M.T.

参考



  1. 世界の平和と安全保障を危機に曝す核拡散への対処を優先課題とするということは、核軍縮と全般的かつ完全な軍縮に対する我々共通のコミットメントを忘れるということではない。
  2. フランスは、NPT6条の下におけるそのコミットメントを完全に遵守する。フランスは、6条の実施という文脈で望ましい行動を規定することを念頭に1995年NPT再検討・延長会議が採択した行動計画を重視していることを強調する。基本的参照基準であるこの行動計画に基づき、私の代表団は、CTBTの発効と「カットオフ」[兵器用核分裂性物質生産禁止]条約の交渉が6条の実施にとって緊急の優先課題であることを想起する。この点には、後で戻る。
  3. ニコラス・サルコジ・フランス共和国大統領は、3月21日、フランスのシェルブールにおいて、核軍縮の分野においてフランスが達成したことについて述べ、フランスの核兵器に関して重要な発表をし、そして、軍縮のさらなる追求に関して、国際社会に対し革新的提案を提示した。
  4. フランスは、核軍縮の面で模範的な実績を持っている。フランスは、英国とともに、核兵器国の中で最初に[1998年4月]「包括的核実験禁止条約(CTBT)」を批准した。フランスは、核爆発用核分裂性物質の生産のための施設を閉鎖・解体することを最初に決めた国である。フランスは、核実験場を透明な形で解体した唯一の国である。フランスは、地対地核ミサイルすべてを解体した唯一の国である。フランスは、弾道ミサイル発射原子力潜水艦の数を、自発的に、3分の1削減した唯一の国である。
  5. 我が国は、軍拡競争に参加したことはなく、「厳格な十分性」の原則を適用している。
  6. フランスが核軍縮に積極的かつ具体的な貢献をすることについての希望を強調するべく、サルコジ大統領は、我が国の核戦力の航空部門における核兵器、ミサイル、そして航空機の総数の3分の1に当たる兵器をさらに削減することを発表した。
  7. 最後に、共和国大統領は、どの核兵器国をとってみても、前例のないようなレベルの透明性を示した。この重要性は、誰の目にも明らかである。
  8. 大統領はまた、フランスの核兵器は、どれも、誰にも目標を合わせていないことに言及した。
  9. フランスは、この[2010年に至る]再検討のサイクルの中で、フランスは、責任ある実際的な形で、核軍縮の問題を取り上げたいと考える。
    私が加盟国に対し、サルコジ大統領が3月21日に提示した革新的提案に注目するよう要請したいのはこのためである。共和国大統領は、実際、相互主義が、集団安全保障及び軍縮の基礎だという事実を強調した。従って、大統領は、国際社会に対し、行動計画を提案した。そして、大統領は、核兵器国に対し、今から2010年のNPT再検討会議までの間、確固たるコミットメントをこの行動計画に与えるよう要請している。行動計画は、8つのポイントからなる。
  10. フランスは、軍縮及び安全保障に関し、明確なアプローチを取っている。核軍縮へのコミットメントは、その行動及び具体的提案に表れている。これが、我が国がNPT再検討プロセスにもたらしたい貢献である。
  11. しかし、我々がこの方向に前進し続けることができるのは、前進しようとの意志があまねく共有された場合のみである。我々は、すべての核兵器国と他のすべての国が、共和国大統領によって提示された行動計画の促進・実施において、我々に加わることを願っている。これは、野心的なプログラムであり、我々は、これによって、核軍縮と全面的かつ完全な軍縮の両方に至る道において、前進することができると真に信じている。
  12. しかし、我々は、現実的でなければならない。軍縮に向けたこのような進展は、核不拡散体制を強化しなくていいことを意味しない。現実は、核軍縮の進展に伴って核拡散の緩和が進みはしないことを教えている。
  13. NPTの普遍性の問題の重要性についての注意を喚起したい。これは、欧州連合(EU)の明確な目標であり、EUは様々な機会をとらえてこれを表明している。
  14. インド、イスラエル、そしてパキスタンに対し、対話を通じて、核不拡散及び輸出規制の国際的基準を、できる限り、遵守するよう働きかけることが望ましい。この方向で進展が達成されており、そのことについて喜ぶべきだが、やらなければならないことが多く残っている。
  15. フランスは、1995年の再検討会議で採択された決議に従った中東における大量破壊兵器とその運搬手段のない地帯の設立を重視していることを再確認する。フランスは、すべての関係国が、この目標の達成に貢献することを願っている。フランスは、安全保障理事会が宣言したとおり、イランの核問題の解決が世界的核不拡散努力と、運搬手段も含めた大量破壊兵器のない中東という目的の達成とに貢献するだろうことを想起する。
  16. 結論とし、準備委員会のこの第2セッションで、条約に関する国際社会の期待に我々が答えられることを我々は願っている。
  17. すべてのことが、我々は新しい核時代に入りつつあることを示している。これが、集団安全保障及び共有された繁栄を意味するようにするには、我々が、今後、協力して、責任ある原子力平和利用を奨励し、拡散のいかなるリスクも防ぐために燃料サイクルの規制を強化し、軍縮への、とりわけ核軍縮への道を進み続けることが絶対的に必要である。フランスは、それらの努力において、全力でその役割を果たす。その中核的課題におけるNPTの重要性を確立するためである──アイゼンハワー大統領による「アトムズ・フォー・ピース(平和のための原子)」イニシアチブの開始から51年後のいま、NPT条約は、世界をより安全な場所にしながら、原子力の民生利用の発展を可能にしなければならない。