核兵器
2003.10.8

検証問題を複雑にする未臨界実験「ユニコーン」

米国エネルギー省は、8月22日、来年、本物の地下核実験と見分けのつきにくい未臨界実験「ユニコーン」を行う予定だと発表しました。ロスアラモス国立研究所を監視し続けている「ロスアラモス・スタディー・グループ」のグレッグ・メローらは、原水禁へのメッセージで、これは検証上複雑な問題をもたらすばかげた行為だと指摘しています。U1a空撮:クリックで拡大

 ユニコーンは、本物の核実験で使われたのと同じような縦穴を使って行われ、上空から見れば本物と区別がつかないとエネルギー省自身が述べています。同じような実験を他の国がした場合、それが未臨界実験か本物の核実験か区別がつかないから、「ごまかし」の批判の応酬が生じ、核実験モラトリアムの維持や包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効の障害になってしまう恐れがあります。U1a施設模式図

 エネルギー省の発表はまた、ユニコーンは、これまでよりも本物の核実験の演習としての意義が高いことを強調しています。核実験場の準備態勢の強化に役立つと言いたいようです。米国政府は、実験の準備期間を短くするための予算を要求しています。米国「天然資源防護協議会(NRDC)」のクリス・ペインは、次のように言っています。「未臨界実験計画は、前から実施されているもので、地下の核爆発実験再開に備えて、実験場の準備態勢と計測能力を維持するのに役立つということが、部分的には、正当化の理由として使われてきた。2004年度予算案にある実験場準備態勢用の追加的予算は、別の問題で、これは、まだ承認されておらず、上院と下院の間の論争の対象となっている。」
 実際は、これまでの未臨界実験が行われてきた地域U1aでは、1990年に地下に掘った横穴(トンネル)を使った本物の核実験を行っています。だから、地下核実験場の地下で行う未臨界実験はすべて、核実験と区別という点で検証上の問題を抱えたものといえますが、ユニコーンは一層区別が難しいものとなるということです。

 下ににエネルギー省の発表とロスアラモス・スタディー・グループのグレッグ・メローのコメントを訳出しておきます。


NNSAネバダサイト・オフィス・ニュース

2003年8月22日 原文(pdf) 

ユニコーン未臨界実験の計画

国家核安全保障局(NNSA)[エネルギー省(DOE)にある核兵器担当部門]は、1997年以来ネバダ実験場で「核兵器維持管理計画(ストックパイル・ステュワードシップ・プログラム)」を支援するために未臨界実験を行ってきている。これらの実験は、米国の保有核兵器の安全性と信頼性を維持するための重要なデータを提供し、NTSと核兵器研究所における重要な技能を維持するのに役立ってきた。これらの実験は、1992年以来維持されている地下核実験モラトリアムに完全に沿ったものである。
 2004年に実施が計画されているユニコーン未臨界実験は、NTS内のU6cとして知られる場所で縦穴形式で実施される。この実験のための初期的サイト準備作業は、進行中である。この活動、そして、縦穴に実験用ハードウエアを設置するための手段は、1992年のモラトリアム以前に実施されてきた地下核実験におけるものと視覚的には似通って見える。これまでの未臨界実験はすべて、[U1aコンプレックス(地域)と呼ばれる]NTSの地下、深さ960フィートの所に位置する水平トンネルで実施されてきた。
 ユニコーン未臨界実験は、核兵器維持管理のために重要な情報を提供するのに加えて、U1aコンプレックス(地域)で実施された他の実験では演習の行われなかったかたちで、NTSの能力の演習を行うことになる。


「ロスアラモス・スタディー・グループ」のグレッグ・メローから
原水禁に寄せられたコメント

 今度の実験は、U1aで行われるものではない。地下核実験に使われたの同じような縦穴で行われるもので、地上とケーブルでつながった筒状の計器「ラック」を使って実施される。上方から見ると──たとえば人工衛星で見た場合──簡単な核実験と見分けがつかないと言われている。とりわけ実験の準備段階ではそうである。(縦穴の口のところで起きるすべてが、一時、高い鋼鉄製の建て屋の中で行われる。)ということは、他の国が米国のまねをすれば、米国の新聞で「核実験騒動」報道の対象になるだろう。おそらくは、CIAと関係のあるワシントン・タイムズかロサンゼルス・タイムズあたりが、先導することになるのだろう。
 [本物の]核実験をする際にも、同じ手続きが使われるから、空中から見た場合の主たる──おそらくは唯一の──違いは、「ラック」の複雑さと、地表に置かれた計器トレーラーの数となるだろう。もちろん、爆発装置そのものも異なるが、これは上方から見ることはできない。[本物の]核実験の出力(yield)が非常に小さい場合には、地震計では、その実験で使われる化学爆薬の方の爆発と区別が付かない。このような[小規模]核実験(流体核実験と呼ばれる)は、米国の核開発にとっては技術的に利益にならないとの結論が出されている。しかし、このような核実験は他の国にとっては、ある程度の利益をもたらすかもしれない。このような核実験が行われた場合、上方からは、地下の未臨界実験とは区別がつかない。[米国が縦穴を使ったユニコーンを実施すれば、他の国がまねをする口実を与える。そして、行われているのが、未臨界実験か流体核実験か見分けようがない。つまり、米国の核兵器推進派にとっても結果的に不利益になる。]
 ところで、法的に言うと、米国は、穴の中で中性子発生装置や中性子計測器を使うこともできる(*注)。入手できている情報によると、これは、これまでも、U1aのサイトで実施されたことがあるという。爆縮をしているプルトニウムで核分裂を起こさせて、そこからでてくる中性子によって、プルトニウムの輪郭に「色づけ」をし、実質的に「写真」がとれるようにするためである。この情報が正しければ、核分裂は起きているが、臨界とはなっていないということである。つまり未臨界に留まるのである。
 これは、すべて、非常にばかげたことで、米国全体での失敗を意味する。軍部、民主党、軍縮関係者、そして、グラスルーツすべての分野における失敗である。


リバウンド実験概念図未臨界実験は、基本的には、化学爆薬による衝撃をプルトニウムに与えて、高温・高熱下におけるプルトニウムの振る舞いを研究するものです。たとえば、最初の未臨界実験「リバウンド」は、プルトニウムの小片に化学爆薬の爆発で飛ばした金属片をぶつけて、その様子をエックス線で記録するものでした。2番目のホログは、筒の口にプルトニウムの薄片を設置し、筒の中の化学爆薬の爆発の衝撃でこれを飛散させ、その様子をホログラムで記録するものでした。中性子の照射を伴わないものです。臨界とはまったく関係のない実験です。念のために、使われるプルトニウムがどんなことがあっても臨界に達するような状況にはならないことを確認して行うので未臨界実験と呼ばれます。こうして得られたデータをこれまで核実験のデータなどと合わせ、スーパーコンピューターで核爆発のシミュレーション研究ができるようにすることを目指していると言います。ホログラム・タイプ実験概念

 新聞報道などで、「臨界ぎりぎりまで反応を起こす実験」などという表現が使われますが、これは、原子力の研究で使われる未臨界実験装置との混同からくるものです。後者は、『原子力用語辞典』(日刊工業社)によると「臨界量以下の核燃料及び減速材、反射材などによって構成された集合体。臨界未満の状態において主として原子炉における物理的な研究を行う」ということです。これなら、臨界ぎりぎりの状況について議論することができますが、「臨界ぎりぎりの」実験をネバダでやってきたわけではありません。
 ただし、メローがここで言っているように、未臨界実験において中性子発生装置を使っている場合もあると言われています。これは、核爆発の核分裂現象自体を研究するためでなく、化学爆薬の衝撃で飛散するプルトニウムに外から中性子を当てて、ある程度の核分裂を起こさせ、その核分裂で発生する中性子を記録することによって、どこにプルトニウムがあるかを「見る」ためです。NRDCのクリス・ペインは、この時に生じるエネルギーをTNT火薬に換算して10分の1グラム程度と推定しています。
ホログラム・タイプ実験装置図:クリックで拡大オーボエ実験装置写真:クリックで拡大



これまでの未臨界実験のリスト

LANL: ロスアラモス国立研究所、 LLNL: ロレンス・リバモア国立研究所

Rebound 1997年7月2日 (LANL)
Holog 1997年9月18日 (LLNL)
Stagecoach 1998年3月25日 (LANL)
Bagpipe 1998年9月26日 (LLNL)
Cimarron 1998年12月11日 (LANL)
Clarinet 1999年2月9日 (LANL)
Oboe 1 1999年9月30日 (LLNL)
Oboe 2 1999年11月9日 (LLNL)
Oboe 3 2000年2月3日 (LLNL)
Thoroughbred 2000年3月22日 (LANL)
Oboe 4 2000年4月6日 (LLNL)
Oboe 5 2000年8月18日 (LLNL)
Oboe 6 2000年12月14日 (LLNL)
Oboe 8 2001年9月26日 (LLNL)
Oboe 7 2001年12月13日 (LLNL)
Vito 2002年2月14日 (LANL)*
Oboe 9 2002年6月7日 (LLNL)
Mario 2002年8月29日 (LANL)
Rocco 2002年9月26日 (LANL)
Piano 2003年9月19日 (LLNL)
Armando 2004年5月25日 (LLNL)
Krakatau 2006年2月23日 (LANL)*

  *英国との共同実験


 参考リンク(英文)

 


(2006.2.24 追記)