原子力安全規制問題
国会プロジェクト
欠陥原発動かし2法案の批判
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法改正の目的は、欠陥原発の延命とコストダウン
電気事業法および原子炉等規制法の一部を改正する法律案と
原子力安全基盤機構法案の問題点
■法案解説
「電気事業法および原子炉等規制法の一部を改正する法律案」は電気事業法と原子炉等規制法という二つの法律の改正を行うための三条からなる法律である。第一条は電気事業法の改正、第二条は原子炉等規制法の改正、第三条はもう一度電気事業法を改正する。電気事業法関係が同じ法律の中で二度改正されるが、これは施行時期の違いとされ、第一条は成立から3ヵ月以内、第三条は1年以内と定められている。
問題の維持基準関係は第三条で、電気事業法第55条の改正として盛り込まれている。ただし、具体的な内容は経産省令によるとされ、維持基準(健全性評価基準)の実体は不明である。原子力発電の検査における、根本的な変更とも言える維持基準導入が、国会への具体的提示もなく、省庁側への白紙委任というかたちで行われることに大きな疑念をいだかざるを得ない。
「原子力安全基盤機構法案」は、原子力施設の検査と設計に関する安全解析や評価を行う独立行政法人を設置する法律である。財源は電源開発特別会計で電気料金が原資で経済産業省の完全ひも付きである。
以下、この法改正の問題点を指摘する。
1、 維持基準も原子力安全基盤機構も「不正防止」のためではない
- 維持基準(健全性評価基準)の導入は、総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の「検査の在り方に関する検討会」で本年(2002年)2月から検討が開始され、6月19日に中間取りまとめとして打ち出されたもの。もともと原子力安全基盤機構の設立とあわせて法整備が計画されており、2004年頃の実施と考えられていた。
- 原子力安全基盤機構の設立は3月29日に閣議決定された「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」に基づいたもの。来年度一年間をかけて設立準備を進め、2004年4月から新法人の業務を開始
する計画だったが、この機に2003年10月業務開始へと前倒しを図っていると伝えられている。
- どちらも、ご覧のように東京電力の不正発覚(8月29日)の以前から準備がスタートしていたもの。今回の「不正防止」のために考えられたものではない。
- 電力自由化の動きと景気低迷の中で、電力会社にはコストダウンが強く求められている。その一環として、原子力発電の稼働率を上昇させるために定期検査間隔の延長と定検期間の短縮がかねてから課題。アメリカではNRCによる規制緩和が行われ、検査の簡素化による高稼働率運転が実現するようになり、それを日本にも導入することが検討されていた。不正問題の背景にある老朽化問題や応力腐食割れ問題を回避し、問題原発を延命させる対応も必要だった。
- 原子力安全基盤機構の設立も維持基準の導入も、もともと「安全規制の効率化を狙いとしている。効率化をねらった規制緩和との批判が予想されていたが、その批判を不正事件を奇貨とし、「不正防止」の名目で押し通そうとするものが今回の法案である。
2、「不正防止」のためには効果はない
- 目玉の1つは自主検査の法定化、すなわち定期自主検査である(電気事業法第55条第1項の改正)。原子力安全・保安院では「検査結果の記録保存が義務づけられることから、その内容が検証可能」としているが、今回の不正事件は記録以前の所で起こっており、記録保存の義務づけが不正防止策とはならない。
- もう一つの目玉は罰則の強化であるが、この実効性も疑わしい。法人には1億円以下とか3億円以下という多額の罰金が課せられることになった(電気事業法第116条から第121条の改正)が、出力100万キロワットの原発を1日停めると1億円の損害と言われていることからすれば、原発を数ヶ月停めるよりもきわめて小さな額だ。重罰が不正の抑止になることは期待できない。
- 原子力安全・保安院の監視能力は現実にはないも同然だった。そのことに対する検証と対策は、この法案には何も盛り込まれておらず、すべて原子力安全・保安院に資料が提出されたり、立ち入り調査の権限が強化されたりしているだけである。監視能力がないに等しい現実は何も変わっていない。
- そもそも今回の不正の究明がいまだ不十分であり、このような中で法令化を急ぐの は「不正の幕引き」でしかない。
3、情報公開規定はまったくない
- 電気事業法第106条・107条の「報告の徴収」と「立入検査」の項の改正では、定期検査や自主検査の「資料提出」や「立入検査」が加えられた。ただしこれらは事業者への義務規定ではなく、「させることができる」であり、資料の提出にいたっては「報告または」となっており、場合によっては「立入検査」も「資料提出」もなくて良いとも読める。きわめて弱腰な改正である。
- さらに原子力安全・保安院に「資料の提出」があっても、それを情報公開するための規定はどこにもない。これまでも情報は事業者と原子力安全・保安院の間を行き来するだけで、保安院は企業秘密やノウハウを理由に情報を秘匿することがほとんどだった。それが今回の不正の温床であり、保安院自身も法改正の目的の中で、国の説明責任と情報公開の充実を上げていたはずである。結局、情報公開のシステムはつくられておらず、このままでは第三者的立場の技術者等が、事業者の行った健全性評価の内容を客観的に外部評価することは不可能である。
4、維持基準は結局「検査の省略・簡略化」となる
- 問題の維持基準の導入は電気事業法第55条の改正で行われる。第1項で定期自主検査を義務づけ、第2項で技術基準への適合確認を事業者に義務づける。そして第3項で「技術基準に適合しなくなる恐れがある部分があると認めるときは」、「経済産業省令で定める事項について」、「経済産業省令で定めるところにより」、「評価を行い、その結果を記録し、これを保存しなければならない。」と書かれている。「経済産業省令・・」の部分が維持基準をさし、条文だけでは維持基準の内容はさっぱり分からない。
- しかし、事実上維持基準として活用されるであろう日本機械学会の「維持規格」によると、問題のある欠陥には評価期間が設定され、欠陥の進展量が基準以内であれば、その評価期間中の運転が認められる。つまり評価期間が5年とされたら、5年間は無検査の可能性が高い。何のことはない、これでは「検査の省略・簡略化」である。
- このほか、維持基準による健全性評価の手法については、次のような前提の欠落がある。
(1) 技術情報の蓄積と公開
(2) SUS-316L製シュラウドのひび割れなどの解明
(3) 手法作成の中立性
(4) 事業者の評価能力・体制
(5) 事業者の審査能力・体制
(6) これまでの規制手法の反省
■現在の技術基準=告示501号との関係
現在の技術基準は電気事業法第39条第1項の技術基準適合義務で定められている。発電用原子力設備については、電気事業法第48条を根拠とする「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」があり、さらにこれを根拠とする「発電用原子力設備に関する構造等の技術基準」がある。これが告示501号と呼ばれるもので、原発を新品同様の状態にすることを要求しているとされるものだ。今回の改正案では第39条第1項には変更がなく、安全水準の維持とは依然、告示501号を満たすこととされている。つまり新品同様を求めるという基準は生きており、一方で新品同様が維持できなくなったら維持基準を適用するというダブルスタンダードの法律となっている。
5、法改正に隠された原発の連続運転期間延長
- 定期検査を定めた電気事業法第54条の改正案では、これまであった「経済産業省令の定める時期ごとに・・検査を受けなければならない」という条文の前に「経済産業省令で定めるところにより」の一文が挿入された。この経済産業省令がいかなるものとなるのか、保安院の概要説明等では全く触れられていない。もしこの省令が、定期検査の時期に関係するものであり、現在の13ヶ月以内と定められた定期点検までの間隔を拡大するようなものであれば、何の説明もなく法定の連続運転期間の延長を図るものである。電力会社の不正事件をきっかけに、さらに電力会社に安全軽視を推奨するような法改正を行うとしたら言語道断である。
6、健全性評価(欠陥評価)をチェックする機関なし
- 青森県知事は「原子力推進行政の資源エネルギー庁と同居しているのはおかしい」などとして「保安院を経済省の組織から切り離すべき」だと主張している。福島県知事からも同様の指摘がある。
しかし原子力安全・保安院を経済産業省から切り離すという抜本的な改革は、まったく着手もされていない。
- 「独立行政法人」として新設されようとしている原子力安全基盤機構は、あたかも中立的な第三者機関であるかに宣伝されている。しかし原子力安全基盤機構も主務大臣は経済産業大臣、主務省は経済産業省である。しかも「特に必要がある場合の経済産業大臣の要求」権が定められており、原子力安全・保安院よりもさらに独立性がない。
- しかも原子力安全基盤機構の業務は健全性評価の審査ではない。健全性評価体制の審査であり(電気事業法第55条第4項の改正)、健全性評価そのものを外部チェックする機関はどこにも存在しない。これでは不正を奨励するようなものだ。
- 当面360人程度とされる職員はどこから集めるのか。中立的かつ能力のある人材
を確保できるのか。電力会社・メーカー等の退職者も役員になれることになっており、役員の欠格事項では、電力会社
等の現職の役員しか排除されない。原発を推進してきた電力会社やメーカー、関連会社からの人間で固められたら、客観的判断はできるはずはない。
電気事業法および原子炉等規制法の一部を改正する法律案と原子力安全基盤機構法案は、あまりにも問題が多く、廃案にされるべきだ。